Maxima で綴る数学の旅

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2023-01-01から1年間の記事一覧

-数学- 複素関数論 補足 リュービルの定理と代数学の基本定理

この記事では複素関数論の応用として代数学の基本定理を証明します。この辺の話は勉強していて興味深い話だったのですが、今回の予定のストーリーからは横道に逸れる感じだったので、補足として今回記事にすることにしました。 リュービルの定理は以前に楕円…

-数学- 複素関数論(18) リーマンのゼータ関数の解析接続

このブログでは過去にリーマンのゼータ関数については色々と取り上げてきました。一方その複素解析的な話はいつもちょっと傍に置いてました。 今回は複素関数論シリーズの最後にリーマンのゼータ関数の複素解析的な部分について基本的な定理を並べていきます…

-数学- 複素関数論(17) ガンマ関数の無限乗積と逆数の整関数性

今回はガンマ関数のガウスによる無限積表示を実解析の範囲で示します。またこれとワイエルストラスによる無限乗積が同値であることを示します。 そしてガンマ関数のワイエルストラスの無限乗積の逆数が整関数であることを紹介します。 ガウスによるガンマ関…

-数学- 複素関数論(16) ガンマ関数の複素平面上の有理型関数への解析接続

ガンマ関数を正の実数軸から正の右半平面に解析接続する際には、表示式は変わらず、より広い領域での収束と正則性を証明したため、結構面倒でした。 今回はガンマ関数を更に複素平面上の有理型関数に解析接続します。今回はガンマ関数が満たす関数方程式を使…

-数学- 複素関数論(15) ガンマ関数の右半平面の正則関数への解析接続

今回は柳田氏の講義録を参考にしています。とても分かりやすく助かっています。 ガンマ関数の解析接続の定理1:ガンマ関数は複素数平面の右半平面$\mathbb{H}_r=\{s\in\mathbb{C} | Re(s)\gt 0\}$で定義された正則関数に解析接続できる。その表示式は正の実…

-数学- 複素関数論(14) ガンマ関数

ガンマ関数は階乗の一般化で数学のあちらこちらで登場する関数です。階乗は自然数$n$に対して$n!=n\cdot(n-1)\cdot(n-2)\cdots 2\cdot 1$のように定義されます。例えば$3!=3\cdot 2\cdot 1=6$です。 これを正の実数に対して拡張したのがガンマ関数で下記の広…

-数学- 複素関数論(13) 積分で定義された関数の正則性

ガンマ関数やゼータ関数の解析接続や解析的な性質を述べるために必要な複素関数論の定理を述べます。 正則な関数列の定理:関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が開集合$U$上で正則で、$U$の任意の有界閉集合で関数$f$に一様収束する(このとき広義一様収束と…

-数学- 複素関数論(12) 有理型関数

ついに有理型関数の定義を理解するところまでやってきました。嬉しいことです。ただその前に有理関数を述べたいと思います。有理関数は複素数係数の多項式の商であるような関数です。$P(z),Q(z)$を複素係数の多項式として$f(z)=\frac{P(z)}{Q(z)}$ならば$f:\…

-数学- 複素関数論(11) 留数定理と積分計算

前回記事で紹介した留数の定義を復習してから留数定理を述べます。 留数の定義:関数$f$のローラン展開を $$f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}a_n(z-c)^n + \sum_{n=1}^{\infty}\frac{a_{-n}}{(z-c)^n},\, z\in A(c;R_1,R_2)$$ $$ a_n=\frac1{2\pi\,i}\int_{|z-c|=r}…

-数学- 複素関数論(10) ローラン展開と孤立特異点

円盤領域で正則な関数は冪級数展開ができましたが、円環領域で正則な関数はローラン展開ができます。今回は明治大学の桂田氏の講義資料をベースにこの辺の定義と定理を確認していきます。 円環領域の定義:同じ中心を持つ2つの円盤の間に挟まれた領域を円環…

-数学- 複素関数論(9) 一致の定理と解析接続

ここまでの知識を使って「一致の定理」と「解析接続の定義」を述べることが出来ます。Wikipediaによれば一致の定理には2つの形があると書いてあり、本当にその通りです。解析概論と名古屋大学の柳田さんの講義資料がそれぞれの形で書いてあります。 一致の…

-数学- 複素関数論(8) 一様収束、項別積分、Mテスト

ちょっとだけ寄り道して一様収束関連の話題をまとめておきます。今回は「複素関数」桂田 祐史氏 明治大学を基にして説明していきます。 一様収束は適当な集合上で定義された複素数値関数の列が、その集合上で一様にある関数に収束することを言います。 一様…

-数学- 複素関数論(7) 正則関数の冪級数展開の証明

ある領域で正則な関数は領域内の任意の点で冪級数に展開できることを証明します。証明に必要な設定を含む版で証明を進めます。 定理54(すごく複雑):関数$f$が領域$K$で正則とする。$K$内の任意の点$a\in K$を中心として領域$K$の最も近い境界点を通る円を$K…

-数学- 複素関数論(6) コーシーの積分表示(公式)と正則関数の冪級数展開

コーシーの積分公式を使うことで、正則関数が冪級数に展開できることを示すことができます。今回も主に解析概論を参考にしています。 定理の述べ方が色々あり、なぜそうしているのかを考えてみました。あっているかはわかりませんが、今回はその辺を書いてみ…

-数学- 複素関数論(5) コーシーの積分表示(積分公式)

複素関数論の入り口で最も重要な定理と言われているコーシーの積分表示です。ある領域で正則な関数を積分を使って表示する方法を学びます。今回はその証明まで述べます。重要な応用は次回とします。 コーシーの積分表示(積分公式):単純閉曲線$C$の内部及…

-数学- 複素関数論(4) コーシーの積分定理

いよいよコーシーの積分定理について述べていきます。ここでは主に解析概論の57. コーシーの積分定理、に基づいて記載しています。 前回、原始関数を使った積分計算の定理を紹介しました。この定理から、ある関数の積分の計算は原始関数がある場合はそれを求…

-数学- 複素関数論(3) 複素積分

複素積分の定義をします。今回は特に、 2021年度現代数学基礎CIII 講義ノート 柳田 伸太郎氏 名古屋大学 を参考にしました。 複素積分の定義:$C$を滑らかな曲線として$C$上で定義された関数$f$ について、$f$の積分路$C$上での複素積分$\int_C f(x)dx$を次…

-数学- 複素関数論(2) 積分路のための複素平面上の曲線について

複素積分に必要な積分路をしっかりと定義するのはとても大変だということを知りました。 複素積分では積分路に沿って複素関数を積分します。この積分路は複素平面上の曲線であり、曲線をうまく定義できている必要があります。 このためにまずパラメータ付き…

-数学- 複素関数論(1) 正則関数と冪級数

まずはともあれ微分と正則関数です。 微分と正則の定義:複素数の集合を$\mathbb{C}$とする。$\mathbb{C}$の開部分集合$U$上の関数$f$が$U$の点$z$で微分可能である、とは極限 $$\lim_{h \to 0}\frac{f(z+h)-f(z)}{h}$$ が存在することを言う。この時 $$f'(z…

-数学- 複素関数論の勉強

この夏、毎日暑い日がつづています。そんな中、少し基本的な数学の勉強をしています。遠い昔、大学生の頃に多分一応勉強したと思うのですが、結構曖昧な部分も多いまま、なんとなく知っているふりをしてきた、複素関数のことです。 正則関数から初めて有理型…

-数学- 1つ問題を作ってみました。の解答編

問題 $p$を任意の奇素数とします。$p$が奇数なので$\sqrt{2}^{p-1}$は自然数になります。このとき$\sqrt{2}^{p-1}$を$p$で割るとその余りは$1$あるいは$p-1$になります。この事を証明してください。 例 $p=7$の時$\sqrt{2}^{7-1}=8$。$8$を$p=7$で割ると商は…

-数学- 1つ問題を作ってみました

今回の勉強をしていて、これはちょっと面白い問題が作れそうと思ったことがありました。それが以下の問題です。回答編は明日載せます。それまで考えてみてください! 問題 $p$を任意の奇素数とします。$p$が奇数なので$\sqrt{2}^{p-1}$は自然数になります。…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(10)命題4.19の証明

この記事では平方剰余の相互法則の証明に必要な補助定理である命題4.19を証明します。そためにまず命題4.18を補題として示します。 命題4.18$p,q$を相異なる奇素数、有限体$F_p$上で$1$の原始$q$乗根の1つを$\zeta$とします。法$q$に関する平方剰余記号の値…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(9)命題4.16の証明

この記事では補助定理の1つである命題4.16 $G_q^2=q^{\ast}$ を証明します。そのためにまず、補題4.17 を示します。 補題4.17$a$を整数、$\mu \neq 1$を$1$の$n$乗根とするとき、$$\sum_{k=1}^{n-1}{\mu^{a\,k}}= \begin{cases}n-1 & (a \equiv 0\,(mod\,n)…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(8)

いよいよ山本先生の本数論入門 (現代数学への入門)による相互法則の証明を見ていきます。有限体$F_p$におけるフロべニウス写像とガウス和を用いた証明です。今回はいくつかの補助定理を紹介し、それらを使った相互法則の証明を紹介します。それぞれの補助定…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(7) 第2補充則の証明

今回はいきなり第2補充則の証明から行きます。前回の記事 では第2補充則において$\sqrt{2}^p$の指数の$p$が変化するとそれに伴って平方剰余記号の値$\left(\frac{2}{p}\right)$が周期$8$で変化することを観察しました。 今回は山本先生の数論入門 (現代数…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (6) フロべニウス写像と2つの補充則

以下の式は$F_p$のフロべニウス写像によって$a$がいつ平方剰余になるのかを特徴づけているとも見えます。 $$\sqrt{a}^p=\left(\frac{a}{p}\right)\,\sqrt{a}\tag{A}$$ それが前回の記事の最後のステートメントでした。それらを再掲します。 「このことから第…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (5) フロべニウス写像と平方剰余

ちょっとだけおさらいから入りましょう。 $p$を素数、$F_p$を 位数$p$の有限体とします。$F_p$の$0$以外の元の集合$F_p^{\times}$は位数$p-1$の巡回群になります。そうするとフェルマーの定理から任意の$x\in F_p$について$x^{p-1}=1$が分かります。両辺に$x…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (4) 平方剰余の定義と相互法則

いよいよこのシリーズも核心に入っていきます。今回は平方剰余の定義を与え、平方剰余記号を定義します。また平方剰余の基本的な性質を示した後、平方剰余の相互法則と関連する補充則などを紹介し、簡単なものには証明をつけます。最後に平方剰余の相互法則…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (3) GFパッケージ

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