ガンマ関数やゼータ関数の解析接続や解析的な性質を述べるために必要な複素関数論の定理を述べます。
正則な関数列の定理:関数列$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が開集合$U$上で正則で、$U$の任意の有界閉集合で関数$f$に一様収束する(このとき広義一様収束という)とき、$f$は$U$上で正則である。
一様連続の定理:有界閉集合で連続な関数は一様連続である。
正則な積分関数の定理:$U\subset\mathbb{C}$を開集合として$F(z,s)$を$(z,s)\in U \times [a,b]\subset\mathbb{R}$で定義された関数で次の2つの条件を満たすものとする。
- 任意の$s$について$F(z,s)$は$z$に関する正則関数である
- $F$は$U\times [a,b]$上連続である。
このとき次の積分で定義された関数$f$は$U$上の正則関数である。
$$f(z)=\int_a^b F(z,s) ds$$
色々な関数が積分で表示されて、さらっと「正則」とか「一様収束」とか言われてもどう考えたら良いのかわかりません。柳田氏の講義資料では上記の正則な積分関数の定理を掲げて、そのような議論の基礎としています。
ちょっとだけ正則な積分関数の定理の中身について考えてみます。まず条件1からたとえば$F(z,0)$や$F(z,1)$は$z$に関する正則関数です。$f(z)$は$F(z,s)$を$s$で積分しているのでその結果には変数$s$は残りません。残るのは$z$の方です。
では正則な積分関数の定理について証明を述べていきます。ちょっと面倒なので$[a,b]=[0,1]$で証明しますが、$任意の[a,b]\subset\mathbb{R}$で成り立つのは明らかです。$n$を自然数としてこの積分を$n$等分割の場合のリーマン和の定義式に直してみます。
$$f_n(z)=\frac1{n}\sum_{k=1}^n F\left(z,\frac{k}{n}\right)$$
と定めます。条件1より$F(z,\frac{k}{n})$は正則、従ってその有限和である$f_n$は$U$上で正則です。また連続でもあります。そこで$\{f_n\}_{n\in\mathbb{N}}$が任意の閉円板$\overline{D}\subset{U}$で一様に$f$に収束することを示れば、$f$は正則であることが示せます。$f_n$は$\overline{D}$で連続なので一様連続の定理から$f_n$は$\overline{D}$で一様連続です。従って任意の$\varepsilon\gt 0$に対して$\delta\gt 0$が存在して、$|s_1 - s_2|\lt \delta$ならば$\sup_{z\in D} |F(z,s_1)-F(z,s_2)|\lt\varepsilon$となります($z$に関係なく$\varepsilon$で抑えられるわけです)。
$f_n$の定義式を無理やり積分を使って書き直すとこうなります。
$$\frac1{n}\sum_{k=1}^n F\left(z,\frac{k}{n}\right)=\sum_{k=1}^n \int_{\frac{k-1}{n}}^{\frac{k}{n}}F\left(z,\frac{k}{n}\right)ds$$
$n\gt \frac1{\delta}$と$n$をとれば、
$$|f_n(z)-f(z)|=\left| \frac1{n}\sum_{k=1}^n F\left(z,\frac{k}{n}\right)- \int_0^1 F(z,s) ds\right| = \left|\sum_{k=1}^n \int_{\frac{(k-1)}{n}}^{\frac{k}{n}}F\left(z,\frac{k}{n}\right)-F(z,s)ds\right|$$ $$ \le \sum_{k=1}^n \int_{\frac{(k-1)}{n}}^{\frac{k}{n}}\left|F\left(z,\frac{k}{n}\right)-F(z,s)\right|ds \le \sum_{k=1}^n \int_{\frac{(k-1)}{n}}^{\frac{k}{n}} \varepsilon=\varepsilon$$
となります。一様収束の定義から$f_n$が$f$に$U$で広義一様収束することが分かりました。よって$f$は$U$で正則です。
次回はガンマ関数について語ります。