ちょっとだけ寄り道して一様収束関連の話題をまとめておきます。今回は「複素関数」桂田 祐史氏 明治大学を基にして説明していきます。
一様収束は適当な集合上で定義された複素数値関数の列が、その集合上で一様にある関数に収束することを言います。
一様収束の定義:$K$を空でない集合、関数$f, f_n$は$f:K\to\mathbb{C}, f_n:K\to\mathbb{C}$で、$\{f_n\}_{n\ge 0}$は関数列とする。$f_n$が$f$に$K$で一様収束する、とは次式が成り立つことをいう。
$$\lim_{n\to\infty} \sup_{x\in K} |f_n(x)-f(x)|=0$$
特に関数列$\{f_n\}_{n\ge 0}$について関数項級数$\sum_{n=0}^{\infty}f_n(x)$が$K$で一様収束するとは部分和$s_n(x)=\sum_{k=0}^{n}f_k(x), x\in K$の作る関数列$\{s_n\}_{n\ge 0}$が$K$で一様収束することをいう。
一様収束する関数列の性質として以下が成り立ちます。
$f_n$が連続なら$f$も連続:$K\subset\mathbb{C}$として$f_n$は複素数値連続関数とする。$\{f_n\}$が$K$で$f$に一様収束するならば$f$も連続である。
$f_n$が正則なら$f$も正則:$K\subset\mathbb{C}$として$f_n$は複素数値正則関数とする。$\{f_n\}$が$K$で$f$に一様収束するならば$f$も正則である。
極限と積分の入れ替え:$K\subset\mathbb{C}$として$C$を$K$上の区分的に滑らかな曲線とする。$\{f_n\}$は複素数値連続関数の列とする。$\{f_n\}$が$K$で$f$に一様収束するならば次式が成り立つ。
$$\int_{C}f(z)dz=\lim_{n\to\infty}\int_C f_n(z)dz$$
項別積分:関数項級数$\sum_{n=0}^{\infty}f_n(x)$が$K$で一様収束するならば、次式が成り立つ。
$$\int_C \sum_{n=0}^{\infty} f_n(z)dz=\sum_{n=0}^{\infty}\int_C f_n(z) dz$$
上記のように一様収束には計算に役立つ良い性質があります。その中でも関数項級数が一様収束すればその積分は項別積分と一致するというのはとても役に立ちます。
複素関数が数論に応用される場合、約束事のように「XXXという関数はYYYという領域で一様収束するので、、、」というフレーズが登場します。この際にその証明を実行する手段としてワイエルストラスのM-testというものを使うことが非常に多いそうです。直感的にも理解しやすいのでぜひ覚えて、1つ2つ試してみると良いです。
WierstrassのM-test:$K$は空でない集合、$\{f_n\}_{n\ge 0}$は$K$上の複素数値の関数列、実数の数列$\{M_n\}_{n\ge 0}$は以下の(i), (ii)を満たすとする。
(i) $\forall n\ge 0, \forall z\in K, |f_n(z)|\le M_n$
(ii) $\sum_{n=1}^{\infty}M_n$は収束
このとき$\sum_{n=1}^{\infty}|f_n(z)|$及び$\sum_{n=1}^{\infty}f_n(z)$は$K$で一様収束する。
関数項$f_n(z)$の絶対値が$z$によらず$M_n$で抑えられること、その$M_n$の総和が収束すれば$f_n(z)$の関数項級数が一様収束することがわかります。前回の級数
$$\frac{f(z)}{z-\zeta}=\frac{f(z)}{z-a}+\frac{(\zeta-a)\,f(z)}{(z-a)^2}+\frac{(\zeta-a)^2\,f(z)}{(z-a)^3}+\cdots=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(\zeta-a)^n\,f(z)}{(z-a)^{n+1}}$$
の右辺が、一様収束することをM-testで示してみます。$z$が中心$a$半径$r$の円周$c$上の点、$\zeta$は円$c$の内部の点で$a$からの距離が$\rho$、また$|f(z)|\le M $としてM-testの様子を見てみましょう。
$$\left| \frac{(\zeta-a)^n\,f(z)}{(z-a)^{n+1} } \right| \le \frac{\rho^n\,M}{r^{n+1}}=\frac{M}{r}\left(\frac{\rho}{r}\right)^n=M_n$$
とすれば、
$$\sum_{n=0}^{\infty}M_n=\frac{M}{r}\sum_{n=0}^{\infty}\left(\frac{\rho}{r}\right)^n=\frac{M}{r}\frac{r}{r-\rho}=\frac{M}{r-\rho}$$
となり確かに収束します。従ってM-testにより
$$\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(\zeta-a)^n\,f(z)}{(z-a)^{n+1}}$$
は円周$c$上で一様収束することがわかりました。