Maxima で綴る数学の旅

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-数学- 有界閉集合と一様収束と広義一様収束の復習

有界閉集合では連続関数に最大・最小が存在という良い性質があります。一方、有界であっても開集合の場合にはそのような性質はありませんし、有界でない閉集合にもそのような性質はありません。

 

ある有界閉集合$S\subset\mathbb{C}$で連続関数列$f_n$が各点収束で$\lim_{n\to\infty}f_n=f$とします。$S$での$f_n-f$の最大値・最小値を$Max_n, Min_n$とすると$n\to\infty$の時に$max(|Max_n|, |Min_n|)\to 0$であればこの有界閉集合上で$f_n$は$f$に一様収束しています。一様収束であればさまざまな良い性質が証明できます。

 

一方、ある集合$U\subset\mathbb{C}$上で連続関数列$f_n$が各点収束で$\lim_{n\to\infty}f_n=f$とします。この収束自身は一様収束ではない場合でも$U$の任意の有界閉部分集合で一様収束していれば色々と言える性質があります。

 

一様収束:$U\subset\mathbb{C}$で$f_n\to f$について次式が成り立つことを一様収束という。$$\lim_{n\to\infty}\sup_{z\in U}|f_n(z)-f(z)|=0$$

命題:明らかに$U$で一様収束ならば任意の$U$の部分集合で一様収束である。

 

広義一様収束:$U\subset\mathbb{C}$で$f_n\to f$について$U$の任意の有界閉部分集合で一様収束していることを広義一様収束という。

 

命題:一様収束ならば広義一様収束(逆は必ずしも真ならず)

関数列の収束$f_n\to f$が$U\subset\mathbb{C}$で一様収束ならば$U$の任意の部分集合で一様収束。従って特に任意の有界閉部分集合で一様収束である。よって広義一様収束している。

一方、関数列の収束が$U$で広義一様収束であっても$U$で一様収束とは限らない。反例として挙げられるのは$(0,1)$区間での関数$x^n$。この区間での極限関数は定数関数$0$。$(0,1)$の任意の有界閉部分集合$S$の最大を$a$とすると$0\lt a \lt 1$より$sup_{z\in S}|z^n-0|=a^n\to 0\, (n\to\infty)$なので広義一様収束している。一方$sup_{z\in (0,1)}|z^n-0|=1 \neq 0 (n\to\infty)$なので一様収束ではない。

 

連続性:集合$U\subset\mathbb{C}$上の連続関数列$f_n$が$f$に一様収束すれば$f$は連続である。

連続性2:領域$D\subset\mathbb{C}$上の連続関数列$f_n$が$f$に広義一様収束すれば$f$は$D$上連続である。

 

正則性:開集合$U$上の正則関数列$f_n$が$f$に$U$上広義一様収束すれば、$f$は$U$上正則である。

ワイエルストラスの定理:開集合$U$上の正則関数列$f_n$が広義一様に$f$に収束すれば微分$f'_n$も広義一様に$f'$に収束する。

ここから$F_n(z)=\sum_{k=0}^n f_k(z)$として$F_n(z)$に上記の命題を適用すれば

$$\sum_{n=0}^{\infty}\frac{d f_n(z)}{dz}=\frac{d}{dz} \sum_{n=0}^{\infty}f_n(z)$$

 

積分積分路$C$を区分的に滑らかな曲線として$f_n, f$は$C$上の連続関数で$f_n$は$f$に$C$上一様収束するとする。次式が成り立つ。

$$\lim_{n\to\infty}\int_C f_n(z)dz=\int_C \lim_{n\to\infty} f_n(z)dz$$

積分2:領域$D$で連続な関数列$f_n$は連続関数$f$に広義一様収束するとする。$D$内の区分的に滑らかな曲線$C$を積分路として次式が成り立つ。

$$\lim_{n\to\infty}\int_C f_n(z)dz=\int_C \lim_{n\to\infty} f_n(z)dz$$

ここから$F_n(z)=\sum_{k=0}^n f_k(z)$として$F_n(z)$に上記の命題を適用すれば

$$\int_C \sum_{n=0}^{\infty} f_n(z) dz=\sum_{n=0}^{\infty} \int_C  f_n(z)dz$$

 

 

ローラン展開:$f$が環状領域$A$上での正則関数とすると、$f$は$A$上で絶対収束かつ広義一様収束するローラン級数に一意に展開できる。