Maxima で綴る数学の旅

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2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

-数学- 複素関数論(11) 留数定理と積分計算

前回記事で紹介した留数の定義を復習してから留数定理を述べます。 留数の定義:関数$f$のローラン展開を $$f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}a_n(z-c)^n + \sum_{n=1}^{\infty}\frac{a_{-n}}{(z-c)^n},\, z\in A(c;R_1,R_2)$$ $$ a_n=\frac1{2\pi\,i}\int_{|z-c|=r}…

-数学- 複素関数論(10) ローラン展開と孤立特異点

円盤領域で正則な関数は冪級数展開ができましたが、円環領域で正則な関数はローラン展開ができます。今回は明治大学の桂田氏の講義資料をベースにこの辺の定義と定理を確認していきます。 円環領域の定義:同じ中心を持つ2つの円盤の間に挟まれた領域を円環…

-数学- 複素関数論(9) 一致の定理と解析接続

ここまでの知識を使って「一致の定理」と「解析接続の定義」を述べることが出来ます。Wikipediaによれば一致の定理には2つの形があると書いてあり、本当にその通りです。解析概論と名古屋大学の柳田さんの講義資料がそれぞれの形で書いてあります。 一致の…

-数学- 複素関数論(8) 一様収束、項別積分、Mテスト

ちょっとだけ寄り道して一様収束関連の話題をまとめておきます。今回は「複素関数」桂田 祐史氏 明治大学を基にして説明していきます。 一様収束は適当な集合上で定義された複素数値関数の列が、その集合上で一様にある関数に収束することを言います。 一様…

-数学- 複素関数論(7) 正則関数の冪級数展開の証明

ある領域で正則な関数は領域内の任意の点で冪級数に展開できることを証明します。証明に必要な設定を含む版で証明を進めます。 定理54(すごく複雑):関数$f$が領域$K$で正則とする。$K$内の任意の点$a\in K$を中心として領域$K$の最も近い境界点を通る円を$K…

-数学- 複素関数論(6) コーシーの積分表示(公式)と正則関数の冪級数展開

コーシーの積分公式を使うことで、正則関数が冪級数に展開できることを示すことができます。今回も主に解析概論を参考にしています。 定理の述べ方が色々あり、なぜそうしているのかを考えてみました。あっているかはわかりませんが、今回はその辺を書いてみ…

-数学- 複素関数論(5) コーシーの積分表示(積分公式)

複素関数論の入り口で最も重要な定理と言われているコーシーの積分表示です。ある領域で正則な関数を積分を使って表示する方法を学びます。今回はその証明まで述べます。重要な応用は次回とします。 コーシーの積分表示(積分公式):単純閉曲線$C$の内部及…

-数学- 複素関数論(4) コーシーの積分定理

いよいよコーシーの積分定理について述べていきます。ここでは主に解析概論の57. コーシーの積分定理、に基づいて記載しています。 前回、原始関数を使った積分計算の定理を紹介しました。この定理から、ある関数の積分の計算は原始関数がある場合はそれを求…

-数学- 複素関数論(3) 複素積分

複素積分の定義をします。今回は特に、 2021年度現代数学基礎CIII 講義ノート 柳田 伸太郎氏 名古屋大学 を参考にしました。 複素積分の定義:$C$を滑らかな曲線として$C$上で定義された関数$f$ について、$f$の積分路$C$上での複素積分$\int_C f(x)dx$を次…

-数学- 複素関数論(2) 積分路のための複素平面上の曲線について

複素積分に必要な積分路をしっかりと定義するのはとても大変だということを知りました。 複素積分では積分路に沿って複素関数を積分します。この積分路は複素平面上の曲線であり、曲線をうまく定義できている必要があります。 このためにまずパラメータ付き…