複素積分に必要な積分路をしっかりと定義するのはとても大変だということを知りました。
複素積分では積分路に沿って複素関数を積分します。この積分路は複素平面上の曲線であり、曲線をうまく定義できている必要があります。
このためにまずパラメータ付き曲線及び滑らかなパラメータ付き曲線を定義します。次に区分的に滑らかなパラメータ付き曲線を定義し、その間の同値関係を定義して、同値類を区分的に滑らかな曲線と定義します。
パラメータ付き曲線:実数の閉区間$[a,b]\subset \mathbb{R}$から複素平面$\mathbb{C}$への連続写像。
滑らかなパラメータ付き曲線:パラメータ付き曲線$p:[a,b]\subset \mathbb{R} \to \mathbb{C}$で連続写像$p$が微分可能で微分$p'$も連続、かつ任意の$t\in[a,b]$で$p'(t) \neq 0$であるもの。
区分的に滑らかなパラメータ付き曲線:パラメータ付き曲線$p:[a,b]\subset \mathbb{R} \to \mathbb{C}$で閉区間$[a,b]$を$k$個の有限個の区間$[a = a_0 , a_1 ],[a_1,a_2],\cdots [a_{k-1},a_k=b]$に分割して、それぞれの区間で対応する分割されたパラメータ付き曲線$p:[a_i,a_{i+1}]\to \mathbb{C},\, 0\le i \le k$が全て滑らかであるもの。
(区分的に)滑らかな曲線:2つの滑らかなパラメータ付き曲線$p:[a,b]\to \mathbb{C}$と$q:[c,d]\to \mathbb{C}$が同値であるとは、連続微分可能な全単射$\phi:[c,d]\to[a,b]$が存在して任意の$s\in [c,d]$に対して$phi'(s)\gt 0$かつ$q(s)=p( \phi(s))$となることを言う。この同値は数学の同値関係を満たす。この同値関係から定義される同値類を滑らかな曲線という。また2つの区分的に滑らかなパラメター付き曲線は対応する区分が全て同値である場合にも同値であるという。こちらの同値も数学の同値関係を満たす。こちらの同値関係から定義される同値類を区分的に滑らかな曲線という。
これらの定義で自分では分かりにくい点が2つありました。1つは「滑らか」の定義が$p'(t) \neq 0$である点です。曲線が点$t$で尖っているとそこでは$p'(t)=0$になるそうです。従って$p'(t)\neq 0$であればそのような点は含まれません。
もう1つは同値類を考える点です。その代わりにパラメータの定義域を$[0,1]$にでも固定しても滑らかな曲線は定義できそうです。しかし区分的に滑らかな曲線の定義では区間を分割しなければならないところがうまくいきません。これを回避するために区間は任意にして曲線の定義からパラメータ付きを消すために同値類を導入したのでしょうか。
このくらいがっちりと複素平面上の曲線を定義しておくと積分路で必要なことが明確になります。
逆向きの曲線:区分的に滑らかな曲線$C$に対してそのパラメータの1つ$p:[a,b]\to \mathbb{C}$に対して$t\in[a,b],p^-(t)=p(t+b-a)$をパラメータとするパラメータ付き曲線の同値類を逆向きの曲線という。
閉曲線:区分的に滑らかな曲線$C$のパラメータの1つ$p:[a,b]\to \mathbb{C}$で$p(a)=p(b)$である場合$C$を閉曲線という。
単純曲線:区分的に滑らかな曲線$C$のパラメータの1つ$p:[a,b]\to \mathbb{C}$で$s, t$が開区間$(a,b)$の元で$s\neq t$ならば$p(s)\neq p(t)$である場合、$C$を単純曲線という。
ある曲線について上記のどの性質も1つのパラメータで言えれば、同値な全てのパラメータで(全単射を使って)言えるので、パラメータに関係なく成立する性質と言えます。
次回は複素積分を導入します。