複素積分の定義をします。今回は特に、
2021年度現代数学基礎CIII 講義ノート 柳田 伸太郎氏 名古屋大学
を参考にしました。
複素積分の定義:$C$を滑らかな曲線として$C$上で定義された関数$f$ について、$f$の積分路$C$上での複素積分$\int_C f(x)dx$を次のように定義する。
$p:[a,b]\to \mathbb{C}$を$C$のパラメータの1つとして、
$$\int_C f(x)dx = \int_a^b f(p(t))p'(t)dt$$
ただし右辺はリーマン積分の意味とする。
さらに区分的に滑らかな曲線$C$に対しては$[a,b]$を分割して各区間で$C$が滑らかになるようにし、各区間での複素積分の全ての和として$\int_C f(x)dx $を定義する。
ここからすぐに原始関数が存在する場合の複素積分の計算方法、およびその場合の閉曲線に沿った複素積分が$0$になることが導かれます。まず原始関数を定義します。大雑把には$f(x)$の原始関数は微分すると$f(x)$になる関数でした。厳密には次のとおりです。
原始関数の定義:開集合$U\subset \mathbb{C}$上の関数$f$に対して、$U$上の関数$F$で、正則でありその微分$F'$が$U$の任意の点$z$で$F'(z)=f(z)$を満たす場合に$F$を$f$の原始関数と呼ぶ。
すると次の定理が成り立ちます。
原始関数を使った積分計算の定理:開集合$U\subset \mathbb{C}$上の連続関数$f$の原始関数を$F$とする。また$C$を$U$上の区分的に滑らかな曲線で始点が$w_0$, 終点が$w_1$とする。次式が成り立つ。
$$\int_C f(x) dx = F(w_1)-F(w_0)$$
原始関数がある場合はそれを求めて、$C$の終点と始点での$F$の値の差で計算できることがわかります。特に$C$が閉曲線の場合$w_0=w_1$なので
$$F(w_1)-F(w_0)=F(w_0)-F(w_0)=0$$
が分かります。
この原始関数を使った積分計算の定理、証明してみましょう。まずは$C$が滑らかな場合です。3番目の等号は合成関数の微分です。
$$\int_C f(x) dx=\int_a^b f(p(t))\,p'(t)dt=\int_a^b F'(p(t))\,p'(t)dt$$ $$=\int_a^b \frac{d\,F(p(t))}{dt}dt=F(p(b))-F(p(a))=F(w_1)-F(w_0)$$
$C$が区分的に滑らかな場合は以下の通りです。$p:[a,b]\subset \mathbb{R} \to \mathbb{C}$で閉区間$[a,b]$を$k$個の有限個の区間$[a = a_0 , a_1 ], [a_1,a_2], \cdots [a_{k-1},a_k=b]$に分割し対応する滑らかな曲線を$C_n,n=1,2,\cdots,k$とします。3番目の等号は望遠鏡和です。
$$\int_C f(x) dx=\sum_{n=1}^k \int_{C_n} f(x) dx=\sum_{n=1}^k (F(p(a_n))-F(p(a_{n-1})))$$ $$=F(p(a_k))-F(p(a_0))=F(p(b))-F(p(a))=F(w_1)-F(w_0)$$ Q.E.D.