Maxima で綴る数学の旅

紙と鉛筆の代わりに、数式処理システムMaxima / Macsyma を使って、数学を楽しみましょう

2021-01-01から1年間の記事一覧

-数学- ランデン変換に関わるテータ関数の恒等式

いつもの本 Number Theory in the Spirit of Ramanujan (Student Mathematical Library) 作者:Berndt, Bruce C. Amer Mathematical Society Amazon のChapter 5, Lemma 5.2.2を読んでいきます。 Lemma 5.2.2 \(x\)を、\(0 \lt x \lt 1\)の時に次の式を満たす…

-数学- ラマヌジャンのテータ関数(今後の議論に必要な定義と定理)

この本の第5章のLemma 5.2.1まで証明を見て来ました。ここまではほぼ超幾何関数の議論だけで済んだのですが、ここから先はラマヌジャンのテータ関数の知識が必要になります。 そのための必要最小限の定義とこの先に必要な等式をここで述べておきます。証明は…

-数学- 超幾何関数の指数関数とその恒等式

今回も下記の本の第5章からCorollary 5.2.1の証明を見ていきます。 Number Theory in the Spirit of Ramanujan (Student Mathematical Library) 作者:Berndt, Bruce C. Amer Mathematical Society Amazon window.addEventListener('message', function(e) { …

-数学- 超幾何関数F(1/2, 1/2; 1; 1-x)のx=0付近での振る舞い

Number Theory in the Spirit of Ramanujan (Student Mathematical Library) 作者:Berndt, Bruce C. Amer Mathematical Society Amazon この本のChapter 5よりLemma 5.1.10が今回のお題です。 Lemma 5.1.10. \(x\rightarrow 0^{+}\)の時、 $$\pi\,F(\frac{1}…

-数学- 超幾何関数の簡単な補題

この本のChapter 5からCorollary 5.1.7を見てみます。 Number Theory in the Spirit of Ramanujan (Student Mathematical Library) 作者:Berndt, Bruce C. Amer Mathematical Society Amazon window.addEventListener('message', function(e) { var iframe =…

-数学- 超幾何関数を使って楕円積分のランデン変換を示す

超幾何関数とテータ関数の関係式: $$\varphi^2(q)=F(\frac{1}{2},\frac{1}{2};1,x)$$ というものを理解したく、色々と調べていると実は買って積んであった手元の本に証明が載っていることを発見しました。 Number Theory in the Spirit of Ramanujan (Stude…

-数学- 超幾何関数 楕円積分も超幾何関数です

前回の記事では超幾何関数を使って様々な初等関数を表すことができました。今回は楕円積分が超幾何関数である、ということを説明します。 楕円積分にはいくつかの種類があり、今回扱うのは第1種完全楕円積分と呼ばれるもので、以下の式で表されます。 $$ \i…

-数学- 超幾何関数 Maximaによる簡約

Maximaには一般超幾何関数がhypergeometric([a1,...,ap],[b1,...,bq],z)という関数として実装されています。このシリーズの最初の記事でも書いたように、これらの引数に特定の値や式を代入することで、多くの初等関数、特殊関数を表すことができます。 Maxim…

-数学- 超幾何関数 オイラーの積分表示(2)

超幾何関数が積分表示できることの証明の後半です。 前回は積分を変形することでポッホハマー記号\((b)_n\)が出てくるところまでご紹介しました。今回はその続きです。ベータ関数の積分による定義は適当な本をご参照ください。Wikipediaにも載っています。 w…

-数学- 超幾何関数 オイラーの積分表示(1)

超幾何関数にはオイラー の積分表示があります。今回はこの積分表示の証明を途中まで掲載します。 window.addEventListener('message', function(e) { var iframe = document.getElementById("tako"); var eventName = e.data[0]; var data = e.data[1]; swi…

-数学- 超幾何関数

ここ最近超幾何関数の勉強を少しずつしています。切っ掛けは、 数理科学 2020年 08 月号 [雑誌] サイエンス社 Amazon こちらの号に掲載されていた平田典子氏の記事: ラマヌジャンと円周率近似公式 に触発されてです。ラマヌジャンが\(\frac{1}{\pi}\)を求め…

-その他- 最近のアンドロイドアプリの作成環境を知る Flutter + DART

時々意識して自分自身の知識をアップデートすることが有用というお話を知る機会がありました。そこで最近のモバイルアプリの開発環境について自分の知識をアップデートするためにアプリを作りながら調べてみました。備忘録も兼ねて書いておこうと思います。 …

-数学- 母関数を使ってドラゴン桜2021 整数問題\(a^2+b^2+c^2=2020\)に挑戦

2021年4月〜6月のクールで放送されたTBS日曜劇場「ドラゴン桜」というドラマ で、東大受験に挑戦する高校生達が描かれ、その中でいくつか数学問題も登場したそうです。それらがYoutubeやブログなどでも取り上げられて、目にする機会がありました。下記のyout…

-数学- タクシー数の一般化と楕円曲線

タクシー数の定義は、2つの正の3乗数の和として表す方法が2通りある最小の整数、であり、具体的には1729でした。また、前回の記事: では2つの正の3乗数の和で表す方法が3通りある最小の整数が87539319であることも、母関数の展開を行うことで証明しま…

-数学- タクシー数と母関数

パピヨンの仔犬!! ちょっと調べ物をしていたらokwaveという調べ物サイトに面白い記事がありました。 okwave.jp タクシー数:2つの正の3乗数(立方数ともいう)の和として2通りに表すことが出来る最小の整数。具体的には1729。 ラマヌジャンのタクシー数と…

-その他- はてなブログでJupyter notebookのノートブックを貼り付ける方法(iframe ノード)

実はこのシリーズを書くにあたって、折角なのでノートブックをそのまま貼り付ける方法はないか、と試行錯誤をした結果、前回の記事でうまく表示することが出来ました。 maxima.hatenablog.jp ノートブックをそのままブログ記事に貼り付けられると、書く手間…

-数学- SympyとGAPで可移部分群の条件から6次方程式のガロア群を高速に求める(4)

今回の話はアルゴリズムは単純で、\(S_n\)の可移部分群を全部求めて、1つづつガロア群かどうかテストしているだけです。当然\(n=6\)でも動作するはずです。 というわけでやってみました。GAPでこの群を求めるのは高速ですが、\(S_6\)の場合、数が279個に増…

-数学- SympyとGAPで可移部分群の条件から5次方程式のガロア群を高速に求める(3)

今回はプログラム編です。いきなりSympyで実装した、可移部分群を使った実装をお見せします。 TransitiveGroups5とかTransitiveGroup4という変数に、大量のPermutationGroupのインスタンスのリストが設定されています。これらはそれぞれ、全て\(S_5\), \(S_4…

-数学- SympyとGAPで可移部分群の条件から5次方程式のガロア群を高速に求める(2)

今回は数学編です。 以前にMaximaで作成した、方程式のガロア群を求めるプログラムをSympyに移植しました。 -数学- はじめてSympyを使ってみた! ーガロア群の計算を題材にしてー - Maxima で綴る数学の旅 まずその際に実装したアルゴリズムを簡単に復習しま…

-数学- SympyとGAPで可移部分群の条件から5次方程式のガロア群を高速に求める(1)

Sympyを使ってみて、群論のサポートがMaximaよりも手厚く、そこは非常に良い点と思いました。Pythonという言語に親しむことも出来ました。そんな作業をしながら、目についた論文やネット記事を読んでいると、方程式が与えられたときに、そのガロア群を求める…

-数学- はじめてSympyを使ってみた! ーガロア群の計算を題材にしてー

この記事ではPython上で動作する数式処理システムSympyを使ってみた感想を書いていきます。 世の中ではPythonというプログラミング言語が大流行しています。スクリプト言語なので、簡単にプログラムを書いて試すことができること、データ処理、機械学習など…

-数学- 高次の円分多項式で係数が1,0,-1以外になる場合の計算による確認

鈴木の定理の証明は、係数がnや-nになる円分多項式及び、そうなるその円分多項式のその部分の係数を簡単に計算する方法を与えています。従って実際にMaximaで計算してみることが出来ます。 まず論文中の補題\( (P)\)の条件を満足する素数列を得る必要があり…

-数学- 円分多項式をmod \(X^{p+1}\)で調べる

鈴木の定理の証明(前半):\(t\)を3以上の任意の奇数とし、素数\(p_1 \lt p_2 \lt \cdots \lt p_t\)を、\(p_1 + p_2 \gt p_t\)を満たす異なる\(t\)個の素数とします。また\(p=p_t, n=p_1\,p_2\,\cdots p_t\)とします。そして\(\Phi_n(X)\, mod X^{p+1}\)に…

-数学- 円分多項式の係数と素数分布

\((P)\) 任意の3以上の自然数\(t\)に対して、\(t\)個の異なる素数\(p_1 \lt p_2 \lt \cdots \lt p_t\)を、\(p_1 + p_2 \gt p_t\)が成り立つようにとることができます。 この補題は素数の大きくなるなり方は制限されていることを述べています。証明ではこの制…

-数学- 円分多項式の係数に関する鈴木治郎氏の論文を読む

今回は鈴木治郎氏の次の論文の紹介です。 Jiro Suzuki, On Coefficients of Cyclotomic Polynomials, Proceedings of Japan Academy Series A, 63, 1987 この論文はPDFがProject Euclidで公開されています。 Xを変数とするn次円分多項式の\(X^i\)の係数を\(c…

-数学- 円分多項式の係数は-1,1,0だけではありません

以前、せきゅーんさんのブログ記事で、円分多項式の係数の話がありました。 105:円分多項式の係数と鈴木の定理 - INTEGERS 円分多項式の係数を計算してみるととても明らかな規則性(係数はどれも0,1,-1のどれか)と思われるものが見えるのですが、実はその規…

-数学- 美しい連分数を作る

オイラーの連分数と級数の関係公式を使えば、誰でも簡単に美しい連分数を作ることができます。例えば、\(\frac{\pi^2}{12}\)の連分数展開: (%i??) [powerdisp,simp]:[true,false]$ (%i2) %pi^2/12=1/(1+1^2/(3+2^2/(5+3^2/(7+4^2/(9+5^2/z))))); $$ \tag{${…

-数学- オイラーの連分数

連分数といえばオイラーです。 オイラーの無限解析 作者:レオンハルト オイラー 発売日: 2001/06/01 メディア: 単行本 の第18章が連分数に当てられています。ここでオイラーは連分数と級数の関係を明らかにして、その応用としてよく知られた数学定数に対して…

-数学- 連分数と一次分数変換と行列

連分数は一次分数変換、従って2x2の正方行列ともとても強い結びつきがあります。 数理科学 2020年 08 月号 [雑誌] 発売日: 2020/07/20 メディア: 雑誌 この辺の導入的な話が、数理科学2020年8月号のラマヌジャン特集の中にありました(岡崎龍太郎:連分数、p…

-数学- ガロア群の自己同型写像の行き先を計算してみた

\(Q\)の拡大\(Q(\sqrt{2},\sqrt{3})\)のガロア群\(Gal(Q(\sqrt{2},\sqrt{3}))\)の要素である自己同型写像を1つ取り(\(\sigma\)とする)、その写像による\(\sqrt{2}\)及び\(\sqrt{3}\)の行き先である\(\sigma(\sqrt{2})及び\sigma(\sqrt{3})\)を計算してみま…