Maxima で綴る数学の旅

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-数学- オイラーの連分数

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連分数といえばオイラーです。

オイラーの無限解析

オイラーの無限解析

 

 の第18章が連分数に当てられています。ここでオイラーは連分数と級数の関係を明らかにして、その応用としてよく知られた数学定数に対して、とても綺麗な形の連分数を求めています。それらをじっくりと観賞してみましょう。

Maximaでは無限連分数を書けないので、無限に続く部分を\(z\)としています。\(\ddots\)だと思って眺めてください。

 

まずは\(log 2\)です。

(%i1) powerdisp:true;

$$ \tag{${\it \%o}_{1}$}\mathbf{true} $$
(%i2) log(2)=1/(1+(1/(1+4/(1+9/(1+16/(1+25/(1+36/(1+49/(1+64/z)))))))));

$$ \tag{${\it \%o}_{2}$}\log 2=\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{4}{1+\frac{9}{1+\frac{16}{1+\frac{25}{1+\frac{36}{1+\frac{49}{1+\frac{64}{z}}}}}}}}} $$

無限に続く1と平方数が織りなす数式です。まさにオイラーですね。

 

次は\(\frac{4}{\pi}\)です。
(%i3) 4/%pi=1+(1/(2+9/(2+25/(2+49/(2+64/(2+81/z))))));

$$ \tag{${\it \%o}_{3}$}\frac{4}{\pi}=1+\frac{1}{2+\frac{9}{2+\frac{25}{2+\frac{49}{2+\frac{64}{2+\frac{81}{z}}}}}} $$

今度は無限に続く2と奇数の平方数です。\(log 2\)とほとんど同じで、1を足す部分が2になり、平方数が奇数だけになりました。すると対数が円周率になってしまいます。一体何が起きているのでしょうか。

 

続いて\(\frac{1}{e-1}\)です。
(%i4) 1/(%e-1)=1/(1+2/(2+3/(3+4/(4+5/(5+6/z)))));

$$ \tag{${\it \%o}_{4}$}\frac{1}{-1+e}=\frac{1}{1+\frac{2}{2+\frac{3}{3+\frac{4}{4+\frac{5}{5+\frac{6}{z}}}}}} $$

今度は自然数の列が並行に進んでいきます。これは綺麗すぎますよね。

 

オイラーがどのようにこれらの連分数を見出したのか、その手順が第18章には書かれています。興味を持った方はぜひ本書を読まれると良いです。計算自体は高校生でも追えるものですが、その結果が素晴らしく、目をみはります。

 

最初にも書いたようにオイラーが考えたのは、連分数と級数の関係でした。この関係が見つかれば、すでに知っている級数展開から連分数展開が見つけられます。一般連分数の第\(n\)項までの値と第\(n+1\)項までの値の差分(第\(n\)差分)を作ると、そこに分かりやすい規則性が見つかります。そしてその第\(n\)差分を\(n=1,2,3,\cdots\)に渡り足し合わせると元の一般連分数の値になります。これは有限連分数でも無限連分数でも同じです。このような計算から次のような式を導きました。
(%i5) 1/A-1/B+1/C-1/D+1/E = 1/(A+A^2/(B-A+B^2/(C-B+C^2/(D-C+D^2/(E-D)))));

$$ \tag{${\it \%o}_{5}$}\frac{1}{A}-\frac{1}{B}+\frac{1}{C}-\frac{1}{D}+\frac{1}{E}=\frac{1}{A+\frac{A^2}{-A+B+\frac{B^2}{-B+C+\frac{C^2}{-C+D+\frac{D^2}{-D+E}}}}} $$

まずこの式はこの有限項の和について厳密に成り立っていることに注意してください。証明は(%i5)をそのまま打ち込みratsimp(%)とすれば右辺と左辺が同じ式になることが分かります。項数を増やしても、無限連分数にしても、この関係は成り立ちます。このような一般的な関係を求めておいて、既知の級数展開に応用するのです。
(%i6) simp:false;

$$ \tag{${\it \%o}_{6}$}\mathbf{false} $$

 

まずはlog(2)の級数展開に応用します。無限に続くところを今度は+rで済ませています。
(%i7) log(2)=1-1/2+1/3-1/4+1/5+r;

$$ \tag{${\it \%o}_{7}$}\log 2=1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{-1}{4}+\frac{1}{5}+r $$

ここから\(A=1, B=2, C=3, \cdots\)を(%o5)の無限連分数版に代入することにより、最初の連分数(%o2)を求めることができます。同様に円周率についても次の級数を使えば良いのです。
(%i8) %pi/4=1-1/3+1/5-1/7+1/9+r;

$$ \tag{${\it \%o}_{8}$}\frac{\pi}{4}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{-1}{7}+\frac{1}{9}+r $$

\(A=1, B=3, C=5, D=7, \cdots\)を(%o5)に代入し、逆数をとると(%o3)が得られます。奇数の平方数や差分の2が登場するのは(%o5)から自明になりました。

 

最後にもう1つ、連分数の第\(n\)差分の計算を進めることで次のような関係式が得られます。
(%i9) 1/A-1/(A*B)+1/(A*B*C)-1/(A*B*C*D)+1/(A*B*C*D*E)=1/(A+A/(B-1+B/(C-1+C/(D-1+D/(E-1)))));

$$ \tag{${\it \%o}_{9}$}\frac{1}{A}-\frac{1}{A\,B}+\frac{1}{A\,B\,C}+\frac{-1}{A\,B\,C\,D}+\frac{1}{A\,B\,C\,D\,E}=\frac{1}{A+\frac{A}{B-1+\frac{B}{C-1+\frac{C}{D-1+\frac{D}{E-1}}}}} $$

この式も有限連分数として厳密に成り立っていますし、もっと項数を増やしても無限連分数としても成り立っています。そこで、\(e\)に関する次の級数展開を応用してみます。
(%i10) 1-1/%e=1/1-1/(1*2)+1/(1*2*3)-1/(1*2*3*4)+r;

$$ \tag{${\it \%o}_{10}$}1-\frac{1}{e}=\frac{1}{1}-\frac{1}{1\,2}+\frac{1}{1\,2\,3}+\frac{-1}{1\,2\,3\,4}+r $$

\(A=1, B=2, C=3,\cdots\)を(%o9)の無限連分数版に代入し、簡単な計算を施すと、(%o4)を得ることができます。

 

オイラー、凄いですね。
(%i11) simp:true;

$$ \tag{${\it \%o}_{11}$}\mathbf{true} $$