Maxima で綴る数学の旅

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-数学- 円分多項式の係数と素数分布

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\((P)\) 任意の3以上の自然数\(t\)に対して、\(t\)個の異なる素数\(p_1 \lt p_2 \lt \cdots \lt p_t\)を、\(p_1 + p_2 \gt p_t\)が成り立つようにとることができます。 

この補題素数の大きくなるなり方は制限されていることを述べています。証明ではこの制限が成り立たないとして、その条件を素数の個数に関する制限に言い換えて、それが素数定理と矛盾することを示しています。

\((P)\)の証明:\(t\)を3以上の自然数として固定して、その\(t\)では\((P)\)が成り立たないと仮定します。この仮定からどんな\(t\)個の異なる素数\(p_1 \lt p_2 \lt \cdots \lt p_t\)をとっても、\(p_1 + p_2 \le p_t\)すなわち\(2\,p_1 \lt p_t\)が成り立ちます。これより任意の自然数\(k\)について\(2^{k-1}\)と\(2^k\)の間の素数の個数は\(t\)個未満のはずです。従って素数個数関数\(\pi(x)\)について\(\pi(2^k)\lt k\,t\)が成り立つことになりますが、これは素数定理に矛盾します。

 

\((P)\)が成り立たないとすると、ある\(t\)が存在して、その\(t\)では \(2\,p_1 \lt p_t\)が成り立つはず、ということは分かります。

その次の文「任意の自然数\(k\)について\(2^{k-1}\)と\(2^k\)の間の素数の個数は\(t\)個未満」は図を書いてみると簡単に分かると思います。

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\((P)\)が成り立たない\(t\)の条件から、上の図で\(p_{t-1}\)以外の大小関係は図の通りに決まります。\(p_{t - 1} \lt 2^k\)となるのが\(2^{k - 1}\)と\(2^k\)の間に素数が最も多く入る場合となり、その時この区間に入っている素数の個数はt-1個です。従ってこの区間素数の個数はt個未満となります。

\(2^0\sim 2^1\)にt個未満、\(2^1\sim 2^2\)にt個未満、、、\(2^{k - 1}\sim 2^k\)にt個未満、ということですから、全部足し合わせると\(2^0\sim 2^k\)には\(k\cdot t\)個未満の素数があることが分かります。つまり\(\pi(2^k)\lt k\,t\)ですね。一方、

素数定理:xを超えない素数の個数は漸近的に\(\frac{x}{\log(x)}\)に近づく。すなわち、

$$ \pi(x)\sim \frac{x}{\log(x)} $$

と得られた不等式\(\pi(2^k)\lt k\,t\)を見比べます。素数定理によればxが指数関数的に増えれば\(\pi(x)\)自身も指数関数的に増えそうです。とてもkの線形で抑えられるとは思えません。

 

雰囲気だけでは気持ち悪いので極限の定義に戻りましょう。どんな\(\epsilon \gt 0\)に対してもある\(X \gt 0\)が存在して、どんな\(x \gt X\)についても、そして\(2^k \gt X\)なるどんな\(k\)についても、

$$ \left| \frac{\pi(x)}{\frac{x}{\log(x)}}-1 \right| \lt \epsilon \\
-\frac{x}{\log(x)}\,\epsilon\, \lt \pi(x)-\frac{x}{\log(x)}\, \lt \frac{x}{\log(x)}\,\epsilon \\
(1-\epsilon)\,\frac{x}{\log(x)}\, \lt \pi(x) \\
(1-\epsilon)\,\frac{2^k}{k\,log(2)}\, \lt \pi(2^k) \lt k\,t \\
$$

最後の式でtを固定してkを大きくすると、左端の項は指数関数的に大きくなりますが、一番大きいはずの右端の項が線形に大きくなるだけですので、kを十分に大きくすればこんな不等式は成り立ちません。従って矛盾です。

 

この証明を見ていると、(ここは雰囲気ですが)tが小さい時には割と簡単に\((P)\)の条件を満たす素数列が取れそうです。現に3, 5, 7が満たしていますし。後の記事で探査で見つける関数をMaximaで書いてみようと思います。

 

次回は鈴木の定理の証明を細かくみていきます。

 

素数定理はハーディ/ライトの数論入門(1) p11 定理6の引用です。