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-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (5) フロべニウス写像と平方剰余

ちょっとだけおさらいから入りましょう。

$p$を素数、$F_p$を 位数$p$の有限体とします。$F_p$の$0$以外の元の集合$F_p^{\times}$は位数$p-1$の巡回群になります。そうするとフェルマーの定理から任意の$x\in F_p$について$x^{p-1}=1$が分かります。両辺に$x$を掛ければ$x^p=x$となります。この式は$x=0$も含めて$F_p$の全ての元で成り立ちます。また$x^p=x$を$F_p$あるいはその拡大体での方程式と見た時、その解の個数は多項式の理論から高々$p$個です。一方、実際に$p$個の要素を持つ有限体$F_p$の元は全てこの方程式の解となっていて、それ以外に解はあり得ません。

すなわち、ある元がフロべニウス写像$x \mapsto x^p$で同じ元になること($x^p=x$)と、その元$x$が体$F_p$に含まれること($x\in F_p$)は同値です。ここで$x=\sqrt{a}$とすれば、$\sqrt{a}^p=\sqrt{a} \iff \sqrt{a}\in F_p$が分かります。これを一歩進めると次の命題4.14を得ることができます。

命題4.14
$a\in F_p$に対して方程式$X^2-a=0$の解を$\sqrt{a}$と書くことにします。$\sqrt{a}$は$F_p$の元ではないかもしれませんが、$F_p$の拡大$F_p(\sqrt{a})$の元ではあります。この時次の式が成り立ちます。
$$\sqrt{a}^p=\left(\frac{a}{p}\right)\,\sqrt{a}$$  


証明
$a\in F_p$の場合、平方剰余の定義「奇素数$p$に対して$X^2-a\equiv 0\,(mod\,p)$が解を持つ」は「$p$を奇素数として有限体$F_p$で方程式$X^2-a=0$は$F_p$内に解を持つ」と同値ですから、
$$\left(\frac{a}{p}\right)=1 \iff \sqrt{a}\in F_p$$
命題3.48より$\sqrt{a}\in F_p \iff \sqrt{a}^p=\sqrt{a}$なのでまとめると、
$$\left(\frac{a}{p}\right)=1 \iff \sqrt{a}\in F_p  \iff \sqrt{a}^p=\sqrt{a}\tag{A}$$
$a\not\in F_p$の場合、上記の議論から、
$$\left(\frac{a}{p}\right)=-1 \iff \sqrt{a}\not\in F_p  \iff \sqrt{a}^p\neq\sqrt{a}$$
は分かります。ではこの場合$\sqrt{a}^p=c\,\sqrt{a}$となる$c$を求めてみましょう。  
$(\sqrt{a}^{p-1})^2=a^{p-1}=1$(最後の等号はフェルマーの小定理)なので$\sqrt{a}^{p-1}=\pm 1$。両辺に$\sqrt{a}$をかけると$\sqrt{a}^p=\pm \sqrt{a}$が成り立ちます。仮定$a\not\in F_p$から$\sqrt{a}^p\neq\sqrt{a}$なので$\sqrt{a}^p=-\sqrt{a}$、従って$c=-1$が分かりました。従って以下が成り立ちます。
$$\left(\frac{a}{p}\right)=-1 \iff \sqrt{a}\not\in F_p  \iff \sqrt{a}^p=-\sqrt{a}\tag{B}$$
(A)と(B)をまとめれば証明すべき式が得られました。  
Q.E.D.

このことから第1補充則、第2補充則、相互法則をフロべニウス写像の言葉で言うと次のようになります。

  1. $\sqrt{-1}^p=\sqrt{-1}$となる$p$の条件を求めること。
  2. $\sqrt{2}^p=\sqrt{2}$となる$p$の条件を求めること。
  3. $\sqrt{q^{\ast}}^p=\sqrt{q^{\ast}}$となる$p$の条件を$q$の値を使って求めること。

次回はこの辺をもう少しだけ補足します。