Maxima で綴る数学の旅

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-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (6) フロべニウス写像と2つの補充則

 

以下の式は$F_p$のフロべニウス写像によって$a$がいつ平方剰余になるのかを特徴づけているとも見えます。

$$\sqrt{a}^p=\left(\frac{a}{p}\right)\,\sqrt{a}\tag{A}$$

それが前回の記事の最後のステートメントでした。それらを再掲します。

「このことから第1補充則、第2補充則、相互法則をフロべニウス写像の言葉で言うと次のようになります。

  1. $\sqrt{-1}^p=\sqrt{-1}$となる$p$の条件を求めること。
  2. $\sqrt{2}^p=\sqrt{2}$となる$p$の条件を求めること。
  3. $\sqrt{q^{\ast}}^p=\sqrt{q^{\ast}}$となる$p$の条件を$q$の値を使って求めること。

第1補充則で考えてみます。$\sqrt{-1}^p=\sqrt{-1}$が成り立つ$p$を知るために$p=1,2,3,4\cdots$と変化させると左辺は$\sqrt{-1},-1,-\sqrt{-1},1,\cdots$と変化し、それを繰り返します。従って$p\equiv 1\,(mod\,4)$の時$\sqrt{-1}^p=\sqrt{-1}$が成立します。同様に$p\equiv 3\,(mod\,4)$の時$\sqrt{-1}^p=-\sqrt{-1}$が成立します。

これらのことと式(A)から$\left(\frac{-1}{p}\right)$の値が次のように分かります。

$p$を奇素数として、
$$\left(\frac{-1}{p}\right)=\begin{cases}
1 & p\equiv 1\,(mod\,4)\\
-1 & p\equiv 3\,(mod\,4)
\end{cases}
$$  

 

同じことを第2補充則でもやってみます。ただ$p$は奇素数なので$p=3,5,7,9,\cdots$と変化させることにします。左辺は$2\sqrt{2},4\,\sqrt{2},8\,\sqrt{2}\cdots$と変化します。このままではちょっと周期性が見えません。ただこの計算は$F_p$の適当な拡大体で考えるものですので、この計算も$mod\,p$でやり直すと次のようになります。

 

$$\begin{array}{c|c|c|c|c|c|c|c|c|c}
p & 3 & 5 & 7 & 9 & 11 & 13 & 15 & 17 & 19 & \cdots \\
  \hline
\sqrt{2}^p & 2\sqrt{2} & 4\sqrt{2} & 8\sqrt{2} & 16\sqrt{2} & 32\sqrt{2} & 64\sqrt{2} & 128\sqrt{2} & 256\sqrt{2} & 512\sqrt{2} & \cdots \\
  \hline
\sqrt{2}^p\, (mod\,p) & -\sqrt{2} & -\sqrt{2} & \sqrt{2} & N/P & -\sqrt{2} & -\sqrt{2} & N/P & \sqrt{2} & -\sqrt{2} & \cdots
\end{array}$$

 

周期性が見えました!$-\sqrt{2}, -\sqrt{2}, \sqrt{2}, \sqrt{2}$が繰り返しています。ただし$p=9, 15$は$p$が素数ではないので$N/P$と記載しています。周期が$8$で$p\equiv 7, 1\,(mod\, 8)$の時$\sqrt{2}^p=\sqrt{2}$となります。同様に$p\equiv 3, 5\,(mod\, 8)$の時$\sqrt{2}^p=-\sqrt{2}$となります。

これらのことと式(A)から$\left(\frac{2}{p}\right)$の値が次のように分かります。

$p$を奇素数として、
$$\left(\frac{2}{p}\right)=\begin{cases}
1 & p\equiv 1,7\,(mod\,8)\\
-1 & p\equiv 3,5\,(mod\,8)
\end{cases}
$$  

こういったことを試してみると第2補充則もフロべニウス写像の現れであることが分かります。ただしこれらの現象だけをみていてもなぜ$F_p$の$p$に関して周期的な現象が起こるのか説明がつきません。

次回は第2補充則の、$1$の$8$乗根を使った証明を紹介します。そこで$p\,(mod\,8)$が現れる理由も紹介します。