今回はいきなり第2補充則の証明から行きます。前回の記事
では第2補充則において$\sqrt{2}^p$の指数の$p$が変化するとそれに伴って平方剰余記号の値$\left(\frac{2}{p}\right)$が周期$8$で変化することを観察しました。
今回は山本先生の数論入門 (現代数学への入門)で紹介されている証明を見ていきます。ここでは$\sqrt{2}$を有限体$F_{p^2}$の中の$1$の原始$8$乗根の適当な和で表しています。これを$p$乗すると和の$p$乗は$p$乗の和を使い、$\sqrt{2}^p$を$1$の$8$乗根の$p$乗の適当な和で表すことができます。
これが周期$8$の由来なのです。では証明をどうぞ。
命題4.8 第2補充則
$p$を奇素数として、
$$\left(\frac{2}{p}\right)=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}=\begin{cases}
1 & p\equiv 1,7\,(mod\,8)\\
-1 & p\equiv 3,5\,(mod\,8)
\end{cases}
$$
証明命題4.14として紹介した式$\sqrt{a}^p=\left(\frac{a}{p}\right)\,\sqrt{a}$で$a=2$と置くと、
$$\sqrt{2}^p=\left(\frac{2}{p}\right)\,\sqrt{2}$$
なので$\sqrt{2}^p=c\,\sqrt{2}$となる$c$を$p$に応じて決定すれば$\left(\frac{2}{p}\right)$の値が分かります。ここで唐突ではあるのですが$1$の原始$8$乗根$\zeta_8$($=\zeta$と略す)を使って$\sqrt{2}$を表してみます。まず任意の奇数の2乗は$8$で割ると$1$余ります。$p$は奇数なので$p^2\equiv 1\,(mod\,8)$。また命題3.51で示した$$\zeta_n\in F_q \iff n|(q-1) \iff q\equiv 1\, (mod\,n)$$
より$\zeta\in F_{p^2}$が成り立ちます。$\zeta$が$1$の原始$8$乗根である事から$\zeta^4=-1$が分かります。ここから以下が成り立ちます。
$$\zeta^3=-\zeta^{-1},\zeta^2=-\zeta^{-2},\zeta=-\zeta^{-3}$$
ここで$\alpha=\zeta+\zeta^{-1}$と置くと、
$$\alpha^2=(\zeta+\zeta^{-1})^2=\zeta^2+2+\zeta^{-2}=2$$
$\alpha=\pm \sqrt{2}$が分かりました。代数的にはどちらでも同じなので$\alpha=\zeta+\zeta^{-1}=\sqrt{2}$とします。命題3.34より、
$$\sqrt{2}^p=\alpha^p=(\zeta+\zeta^{-1})^p=\zeta^p+\zeta^{-p}$$
これで$\zeta$を使って$\sqrt{2}$を表せました。$p$は奇数より$p\equiv 1,3,5,7\,(mod\,8)$なのでこの4つのケースに場合分けして$\zeta^p+\zeta^{-p}$の値を求めます。$\zeta$の冪乗が位数$8$の巡回群を構成することに注意すると、
$(1)$ $p\equiv 1\,(mod\,8)$の場合、$\zeta^p+\zeta^{-p}=\zeta+\zeta^{-1}=\sqrt{2}$。
$(2)$ $p\equiv 3\,(mod\,8)$の場合、$\zeta^p+\zeta^{-p}=\zeta^3+\zeta^{-3}=-\zeta^{-1}-\zeta=-\sqrt{2}$。
$(3)$ $p\equiv 5\equiv -3\,(mod\,8)$の場合、$\zeta^p+\zeta^{-p}=\zeta^{-3}+\zeta^{3}=-\zeta-\zeta^{-1}=-\sqrt{2}$。
$(3)$ $p\equiv 7\equiv -1\,(mod\,8)$の場合、$\zeta^p+\zeta^{-p}=\zeta^{-1}+\zeta=\sqrt{2}$。
まとめると、
$$\sqrt{2}^p=\begin{cases}
\sqrt{2} & p\equiv 1,7\,(mod\,8)\\
-\sqrt{2} & p\equiv 3,5\,(mod\,8)
\end{cases}
$$
したがって次が分かりました。
$$\left(\frac{2}{p}\right)=\begin{cases}
1 & p\equiv 1,7\,(mod\,8)\\
-1 & p\equiv 3,5\,(mod\,8)
\end{cases}
$$
Q.E.D.