Maxima で綴る数学の旅

紙と鉛筆の代わりに、数式処理システムMaxima / Macsyma を使って、数学を楽しみましょう

-数学- 1つ問題を作ってみました。の解答編

 

問題

$p$を任意の奇素数とします。$p$が奇数なので$\sqrt{2}^{p-1}$は自然数になります。このとき$\sqrt{2}^{p-1}$を$p$で割るとその余りは$1$あるいは$p-1$になります。この事を証明してください。

 

$p=7$の時$\sqrt{2}^{7-1}=8$。$8$を$p=7$で割ると商は$1$で余りも$1$です。

$p=13$の時$\sqrt{2}^{13-1}=64$。$64$を$p=13$で割ると商は$4$で余りは$12$です。この場合は$12=13-1=p-1$になってます。

 

証明

オイラーの基準から任意の整数$a$と奇素数$p$について

$$\left(\frac{a}{p}\right)\equiv a^{\frac{p-1}{2}}\,(mod\,p)$$

です。ここで$a=2$とおくと、

$$\left(\frac{2}{p}\right)\equiv 2^{\frac{p-1}{2}}\,(mod\,p)$$

また$2^{\frac{p-1}{2}}=\left(2^{\frac12}\right)^{p-1}=\sqrt{2}^{p-1}$です。これを代入すると、

$$\left(\frac{2}{p}\right)\equiv \sqrt{2}^{p-1}\,(mod\,p)$$

です。

左辺は平方剰余記号なのでその値は$\pm 1$です。従って右辺を$p$で割った余りは$1$あるいは$p-1$となります。

 

解説

有限体$F_{p^2}$で成り立つ式$\sqrt{a}^p=\left(\frac{a}{p}\right)\sqrt{a}$を見ながら両辺を$\sqrt{a}$で割って、$mod\,p$で言い直すと高校生でも問題文は理解できそうに思えたのがこれを問題の形にしようと思ったきっかけです。

  • 整数問題だけど$\sqrt{2}$が入っていてそうは見えにくいこと
  • $2$の冪乗を割った余りが限定されるのが不思議に見えること
  • 平方剰余が問題中に出てくるわけではないのでオイラーの基準などと結びつきにくいこと

なども面白さに貢献していると思いました。

 

ではこの問題を大学入試に出せるかというとそれは多分NGです。余りが$1$になるか$p-1$になるかは$2$が$p$の平方剰余かどうかで決まることに基づいているからです。さすがに平方剰余は高校数学を超えていると思います。