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-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(10)命題4.19の証明

 

この記事では平方剰余の相互法則の証明に必要な補助定理である命題4.19を証明します。そためにまず命題4.18を補題として示します。

 

命題4.18
$p,q$を相異なる奇素数、有限体$F_p$上で$1$の原始$q$乗根の1つを$\zeta$とします。法$q$に関する平方剰余記号の値を係数とする$\zeta$のガウス和を$ G_q=\sum_{a=1}^{q-1}\left( \frac{a}{q} \right)\zeta^a $と定義します。この時任意の整数$k$について次が成り立ちます。
$$\sum_{a=1}^{q-1}{\left( \frac{a}{q}\right)\,\zeta^{k\,a}}=\left( \frac{k}{q}\right)G_q$$
証明  
$k\equiv0\,(mod\,q)$の時は、左辺$=\sum_{a=1}^{q-1}{\left( \frac{a}{q}\right)}=0$、右辺$=\left( \frac{0}{q}\right)G_q=0$から等式が成り立ちます。  
$k\not\equiv0\,(mod\,q)$の時、$\left( \frac{k}{q}\right)^2=1$だから、
$$\sum_{a=1}^{q-1}{\left( \frac{a}{q}\right)\,\zeta^{k\,a}}=\left( \frac{k}{q}\right)\,\sum_{a=1}^{q-1}{\left( \frac{k}{q}\right)\,\left( \frac{a}{q}\right)\,\zeta^{k\,a}}=\left( \frac{k}{q}\right)\,\sum_{a=1}^{q-1}{\left( \frac{k\,a}{q}\right)\,\zeta^{k\,a}}$$
$a$が$F_q$を動くとき$c=k\,a$も$F_q$全体を動くので、
$$\left( \frac{k}{q}\right)\,\sum_{a=1}^{q-1}{\left( \frac{k\,a}{q}\right)\,\zeta^{k\,a}}=\left( \frac{k}{q}\right)\,\sum_{c=1}^{q-1}{\left( \frac{c}{q}\right)\,\zeta^{c}}=\left( \frac{k}{q}\right)\,G_q$$  
Q.E.D.

 

 

命題4.19  
$p,q$を相異なる奇素数、有限体$F_p$上で$1$の原始$q$乗根の1つを$\zeta$とします。法$q$に関する平方剰余記号の値を係数とする$\zeta$のガウス和を$ G_q=\sum_{a=1}^{q-1}\left( \frac{a}{q} \right)\zeta^a $と定義します。このとき次式が成り立ちます。

$$G_q^p=\left(\frac{p}{q}\right)\,G_q$$

 

証明  

今考えている体は$F_p$に$1$の原始$q$乗根を添加した拡大体(これを$F$としましょう)なので標数は$p$です。従って命題3.34より任意の$a,b\in F$について$(a+b)^p=a^p+b^p$が成り立ちます。繰り返し適用すると$a_n\in F$について$\left(\sum_{n=1}^{p-1}a_n\right)^p=\sum_{n=1}^{p-1}a_n^p$が分かります。これを用いると、

$$G_q^p=\left(\sum_{a=1}^{q-1}{\left(\frac{a}{q}\right)\,\zeta^a}\right)^p=\sum_{a=1}^{q-1}{\left(\frac{a}{q}\right)^p\,\zeta^{p\,a}}=\sum_{a=1}^{q-1}{\left(\frac{a}{q}\right)\,\zeta^{p\,a}}=\left(\frac{p}{q}\right)\,G_q$$

ただし3番目の等号は平方剰余記号の値が$\pm 1$であるが$p$が奇数だからです。また4番目の等号は命題4.18そのものです。

Q.E.D.

$G_q^p$は一体どうやって簡単にできるのだろうと心配していたのですが、$(a+b)^p=a^p+b^p$を使うととてもやさしく簡単に式変形ができました。

 

これでこのシリーズも完結です。

  • フロべニウス写像を使ってある性質を持つ元が$F_p$に入るかどうかが判定できること
  • その直接の応用として$F_p$の元の平方根が$F_p$に入るかどうか、つまり平方剰余かどうかが判定できること
  • 平方根ガウス和で表すことができること
  • ガウス和が$F_p$に入るかどうかもフロべニウス写像で判定でき、その際の条件が$mod\, q$で表されること

を勉強しました。