Maxima で綴る数学の旅

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-数学- ラマヌジャンの円周率公式の証明(アイゼンシュタイン級数とその応用)

今回は今までに得られたアイゼンシュタイン級数の公式を元にして、ラマヌジャンの円周率公式のひとつを証明します。今回証明するのは次の式です。

$$\frac{16}{\pi}=5+ \frac{47}{64}\,\left(\frac12\right)^3 + \frac{89}{64^2}\,\left(\frac{1\cdot 3}{2\cdot 4}\right)^3+ \frac{131}{64^3}\,\left(\frac{1\cdot 3\cdot 5}{2\cdot 4\cdot 6}\right)^3 + \cdots$$

この式を総和記号、ポッホハマー記号などを使って書くと、\(A_k=\frac{\left(\frac12\right)_k^3}{k!^3}\)として次の通りです。

$$\frac{16}{\pi}=\sum_{k=0}^{\infty }{\frac{\left(42\,k+5\right)\,A_{k}}{2^{6\,k}}}$$

 

すでに何回も紹介していることですが、数学者の平田典子さんの以下の記事にはラマヌジャンの円周率公式の由来や円周率計算の歴史を紹介した後、上記公式の証明の詳細を記載しています。

平田典子:ラマヌジャンと円周率近似公式 数理科学 2020年8月号

今回のアイゼンシュタイン級数のシリーズ記事でこの証明の部分部分を巡ってきたのですが、平田さんが紹介されている証明の最後のステップにようやく辿り着きました。それは以下の2つのアイゼンシュタイン級数に関する公式から上記の式を証明するステップです。

$$P\left(e^ {- 2\,\pi\,\sqrt{n} }\right)=\left(1-2\,x_{n}\right)\,\sum_{k=0}^{\infty }{\left(3\,k+1\right)\,A_{k}\,X_{n}^{k}}$$

$$\frac{6\,\sqrt{n}}{\pi}-P\left(e^ {- \frac{2\,\pi}{\sqrt{n}} }\right)=n\,P\left(e^ {- 2\,\pi\,\sqrt{n} }\right)$$

これらの式で\(n=7\)の場合を考えて、別途求めた\(x_7,X_7\)の値を代入することで証明は完結します。