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-数学- 複素関数論(16) ガンマ関数の複素平面上の有理型関数への解析接続

ガンマ関数を正の実数軸から正の右半平面に解析接続する際には、表示式は変わらず、より広い領域での収束と正則性を証明したため、結構面倒でした。

 

今回はガンマ関数を更に複素平面上の有理型関数に解析接続します。今回はガンマ関数が満たす関数方程式を使うことで左半面でも値が一意に決まることで、正則性、極の位置などが決定されます。

 

ガンマ関数の解析接続定理2:$\Gamma(s)$は$\mathbb{C}$上の有理型関数に解析接続される。極は$0$及び全ての負の整数であって全て1位の極で$s=-n$での留数は$\frac{(-1)^n}{n!}$である。

証明は以下の通りです。まずガンマ関数の積分による定義を部分積分することで関数方程式$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$が得られます。次にガンマ関数の解析接続定理1よりガンマ関数は右半平面に解析接続されることを思い出しましょう。さらに左に解析接続していくために、この関数方程式を次のように変形します。

$$\Gamma(s)=\frac{\Gamma(s+1)}{s}$$

すると右辺は$s\ne 0, Re(s)\gt -1$で定義されています。例えば$\Gamma(-\frac1{2}+i)=\frac{\Gamma(\frac1{2}+i)}{-\frac1{2}+i}$のようにして計算できてしまうわけです。このことを利用すると$Re(s)\le 0$方面にも解析接続できます。

$$\Gamma_1(s)=\frac{\Gamma(s+1)}{s}$$と定義すれば、$\Gamma_1(s)$は$\Gamma(s)$と$Re(s)\gt 0$で一致しており、$s\ne 0, s\gt -1$で定義され、$s=0$に1位の極を持ち、極の集積点はないので有理型関数であることが分かります。$s=0$での留数は$$\lim_{s\to 0}s\Gamma_1(s)=\lim_{s\to 0}\Gamma(s+1)=\Gamma(1)=1$$

 

次に$$\Gamma_2(s)=\frac{\Gamma_1(s+1)}{s}$$と定義すれば、$\Gamma_2(s)=\frac{\Gamma(s+2)}{(s+1)s}=\frac{\Gamma(s+1)}{s}$が成り立ちます。$\Gamma_2(s)$は$\Gamma(s)$と$Re(s)\gt 0$で一致しており、$s\ne 0,-1, s\gt -2$で定義され、$s=0,-1$に1位の極を持ち、極の集積点はないので有理型関数であることが分かります。$s=-1$での留数は$$\lim_{s\to -1}(s+1)\Gamma_2(s)=\lim_{s\to -1}\frac{\Gamma(s+2)}{s}=-\Gamma(1)=-1$$

 

一般に$$\Gamma_m(s)=\frac{\Gamma_{m-1}(s+1)}{s}$$と定義すれば、$\Gamma_m(s)=\frac{\Gamma(s+m)}{(s+m-1)\cdots (s+1)s}=\frac{\Gamma(s+1)}{s}$が成り立ちます。$\Gamma_m(s)$は$\Gamma(s)$と$Re(s)\gt 0$で一致しており、$s\ne 0,-1,\cdots, -m+1,  s\gt -m$で定義され、$s=0,-1,\cdots, -m+1$に1位の極を持ち、極の集積点はないので有理型関数であることが分かります。$s=-m+1$での留数は$$\lim_{s\to -m+1}(s+m-1)\Gamma_m(s)=\lim_{s\to -m+1}\frac{\Gamma(s+m)}{(s+m-2)\cdots (s+1)s}=\frac{\Gamma(1)}{(-1)(-2)\cdots(-m+2)(-m+1)}$$ $$=\frac{(-1)^{(m-1)}}{(m-1)!}$$

$m$は任意の自然数なので、$s=0,-1,-2,\cdots$に極を持つ全平面の有理型関数に解析接続できました。

Q.E.D.