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-数学- ガロア群の計算の流れ

ガロアの時代 ガロアの数学 第二部 数学篇 (シュプリンガー数学クラブ)

ガロアの時代 ガロアの数学 第二部 数学篇 (シュプリンガー数学クラブ)

 

 この本の第3章にフランス語から著者が翻訳したガロアの原論文が掲載されています。この論文を日本語で読める、というのは本当に素晴らしいことです。

 

「方程式が根号で解けるための条件についての論文」エヴァリスト・ガロア , Ecrits et memoires mathematiques d'Evariste Galois, p38-p101

 

この論文ではガロア群の計算が命題Iで行われるが、それに先立って、補助定理I-IVが説明&証明されています。ちなみにガロアはこの論文で既約で重根のない方程式を考えています。

 

補助定理I多項式で成り立つ一般的な話なので、ここでは割愛します。

 

補助定理IIでは、与えられた方程式の根\(\alpha, \beta, \gamma\ldots\)の一次結合\(V=A\,\alpha+B\,\beta+C\,\gamma+\cdots\)を作り、一次結合に現れる根の全ての置換でVの値が異なるようにすることが出来る、と述べています。

 

補助定理IIIでは、全ての根\(\alpha, \beta, \gamma\ldots\)は補助定理IIで導入したVの有理関数f(V)として表されることを述べています。また証明として実際に有理関数f(V)を構成する方法が述べられています。

 

補助定理IVでは、補助定理IIのVが満たす方程式の作り方を示し、Vの最小多項式を求める方法を示します。またVに現れる根の置換によって得られる値V1(=V), V2, V3,,,でVの最小多項式の根になっているものをV, V', V'',,,とすると、f(V)(\(=\alpha\))だけでなく、f(V'), f(V''),,,も元の方程式の根になることを述べています。

 

そして、命題Iです。

命題Iでは与えられた方程式の解\(\alpha, \beta, \gamma\ldots\)がm個ある場合、根の置換の群で以下の2つの性質を持つものがあるとしています:(1)その群の置換で値の変わらない根の関数が有理的に表されること、(2)有理的に表さられる根の関数はこの群の置換で変わらない。 

そしてその群を置換群として具体的に構成する方法が述べられています。

 

具体例として[1]と同じ3次方程式\( x^3-3\,x-1=0 \)を例にとり、補助定理II, III, IV及び命題Iを計算で示していきます。

 

[1] 方程式のガロア群の求め方 – 五次元世界の冒険