Maxima で綴る数学の旅

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-数学- アイゼンシュタイン級数の変換公式


ラマヌジャンの円周率公式は少なくとも17種類がラマヌジャンのノートブックに記載があり、さらにその後の研究で大量に類似の公式が見つかっています。それらの証明はいろいろな手法が使われており難易度も様々なようですが、数学愛好家としてはその1つくらいは理解したい、と思います。

多くの証明に共通する基本的な道具立ての部分として以下があります。

  • 楕円積分 \(K(k)=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{1}{\sqrt{1-k^2\,\sin ^2\vartheta}}\;d\vartheta}\)
  • 超幾何関数\({}_pF_q(a_1,,,a_p;b_1,,,b_q,;z)\)
  • ラマヌジャンのテータ関数\(f\left(a , b\right)=\sum_{n= -\infty }^{\infty }{a^{\frac{n\,\left(n+1\right)}{2}}\,b^{\frac{\left(n-1\right)\,n}{2}}}\)と\(f(-q):=f(-q,-q^2)=\prod_{n=1}^{\infty}(1-q^n)\)
  • クローゼンの公式 \( _{2}F_1\left(\frac12,\frac12;1;x\right)^2= {}_3F_2\left(\frac12,\frac12,\frac12;1,1;4\,x\,(1-x)\right) \)
  • 超幾何微分方程式\( x\,(1-x)\frac{d^2\,F(x)}{d\,x^2}+(c-(a+b+1)\,x)\,\frac{d\,F(x)}{d\,x}-a\,b\,F(x)=0\)
  • アイゼンシュタイン級数の変換公式 \( P(q^2)=(1-2\,x)\,z^2 + 6\,x\,(1-x)\,z\,\frac{dz}{dx} \)
  • モジュラー等式
  • シンギュラーモジュリ

今回はこの中からアイゼンシュタイン級数の変換公式について勉強しています。その内容をブログに記していきたいと考えています。

 

アイゼンシュタインの変換公式を定理の形で述べます。

定理5.4.9 \(P(q), f(-q), q, z, x, y\)が\(P(q)=1-24\,\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n\,q^n}{1-q^n}, q=e^{-y}, f(-q)=\prod_{n=1}^{\infty}(1-q^n), z= {}_{2}F_{1}(\frac12,\frac12;1;x), y=\pi\,\frac{{}_{2}F_{1}(\frac12,\frac12;1;1-x)}{{}_{2}F_{1}(\frac12,\frac12;1;x)}\)の時、
$$ P(q^2)=(1-2\,x)\,z^2 + 6\,x\,(1-x)\,z\,\frac{dz}{dx}$$
が成り立つ。

定理番号及び記号は

の第5章によっています。

 

定理5.4.9の証明のために基本的な道具以外に、次の2つの道具が必要です。これらは別途いつか証明することにして、今回は証明抜きで使うことにします。

 

定理5.4.3 (3) \(f(-q), x, q, z\)が定理5.4.8と同じように定義されているとき、

$$f\left(-q^2\right)=\frac{\left(\left(1-x\right)\,x\right)^{\frac{1}{12}}\,\sqrt{z}}{2^{\frac{1}{3}}\,q^{\frac{1}{12}}}$$

定理5.4.8 \(x, y\)が定理5.4.8と同じように定義されているとき、

$$ \frac{dy}{dx}=-\frac{1}{x\,(1-x)\,z^2}$$

あるいは

$$ \frac{dx}{dy}=-x\,(1-x)\,z^2$$

次回は定理5.4.9を証明します。