以下の記事でNayandeepさんによるラマヌジャンの円周率公式の証明の構造を示し、フレームワークと呼んでみました。
このフレームワークの中でポイントとなる部分を変更すると異なる円周率公式を得ることができます。そのポイントの1つがガウス超幾何関数の2次変換公式を別のものに取り替えることです。
すると、「クローゼンの公式の特別な場合」の式が影響を受け別のものになります。そのため\(z^2\)が違う式になります。その微分も変わるためアイゼンシュタイン級数の変換公式に代入する式が変わり、得られる\(P(e^{-2\,\pi\,\sqrt{n}})\)の式も変化します。このようにして別の円周率公式が計算されます。
今回はネットから使えそうなガウス超幾何関数の2次変換公式を見つけてきて、上記の方針を実行しました。その結果、
$$\frac{2}{\pi}=\sum_{k=0}^{\infty}(-1)^k\,A_k\,(4\,k+1)$$
を示すことができます。
NIST(米国標準技術研究所)のDLMF(Digital Library of Mathematical Functions)はさまざまな数学関数の性質と公式を集めた図書館のようなものです。その中に超幾何関数の公式も多数採録されています。そこで次の2次変換公式を見つけることができました。[DLMF, Eq. 15.8.16]
$${}_2F_1\left(a,b; -b+a+1;z\right)=\frac{1}{\left(1-z\right)^{a}}\cdot{}_2F_1\left(\frac{a}{2},-b+\frac{a}{2}+\frac{1}{2};-b+a+1; -\frac{4\,z}{\left(1-z\right)^2}\right)$$
この超幾何関数の2次変換公式を使うことで、\( P(e^{-2\,\pi\,\sqrt{n}}) \)の式で別の式を導き、結果として似てはいるが別の円周率公式を導くことができるのです。
今回は上記の2次変換公式から\(P(e^{-2\,\pi\,\sqrt{n}})\)の別の式を導くところまでを示します。次回でそれを使って上記の円周率公式を導くことにします。