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-数学- Youtubeビデオ 圏論勉強会で学んだこと(5)

第7回 様々な極限 代数的データ型


第7回圏論勉強会@ワークスアプリケーションズ

 

復習で少しびびります。ここは図式なしで。

空圏の極限は終対象。空圏の余極限は始対象。

2つ以上の対象からなる離散圏の極限は直積。余極限は直和。

1つの対象からなる圏の極限は1つの対象。余極限も1つの対象。これは図式を書けば自明だし、直積、直和の1つ版とも言える(ビデオにないことを自分で考えただけなので、、、間違ってたらごめんなさい)。

 

イコライザとコイコライザ

2つの対象の間の平行射 \(\bullet \rightrightarrows \bullet\) の極限をイコライザ、余極限をコイコライザと言う。

$$\xymatrix{
 & X \ar@{.>}[dl] \ar[ddl] \ar[dd] \\
E \ar[d]_x \ar[dr] & \\
A \ar@<0.2em>[r]^f \ar@<-0.2em>[r]_g & B 
}$$

極限はコーンの終対象で、コーンの定義から三角形EABが可換であることより、\(f\)と\(x\)の合成射は射\(E\rightarrow B\)と等しく、同様に\(g\)と\(x\)の合成射は射\(E\rightarrow B\)に等しい。これより\(f\circ x\)=\(g\circ x\)が成り立つ。\(E\)を\(f\)と\(g\)のイコライザ、ということで記号\(eq(f,g)\)と表すことがある。

 

集合の圏\(\mathcal{Sets}\)でのイコライザはどうなるか?\(x\)が指すどの要素に対しても、\(f\)で行った先と\(g\)で行った先が等しくなるはずで、その極限はそうなる最大の集合\(E=\{p\in A|f(p)=g(p)\}\)と写像\(x(p)=p,\, p \in E\)がイコライザとなる。

$$\xymatrix{
 & X \ar@{.>}[dl] \ar[ddl] \ar[dd] \\
E \ar[d]_x \ar[dr] & \\
A \ar@<0.2em>[r]^f \ar@<-0.2em>[r]_g & B 
}$$

定理:イコライザはモノ射(コイコライザはエピ射)

$$\xymatrix{
 & X \ar@{.>}[dl]_{h_1,\,h_2} \ar[ddl]^y \ar[dd] \\
E \ar[d]_x \ar[dr] & \\
A \ar@<0.2em>[r]^f \ar@<-0.2em>[r]_g & B 
}$$

で任意の\(h_1,\,h_2:X\rightarrow E\)について\(x \circ h_1=x \circ h_2\)が成り立つとする。ここから\(h_1=h_2\)を導く。

まず上記仮定と図より、\(x\circ h_1=x\circ h_2=y \cdots \clubsuit \)が成り立つ。この\(y:X\rightarrow A\)に対して、イコライザの定義より三角形XABはABを底とするコーン(の側面)であり、ゆえに可換になる。従って\(y\circ f=y\circ g\)となる。\(x\)はイコライザなので\(y\)に対して唯一の射(仮に\(u\)と名付けると)\(u:X\rightarrow E\)が存在して\(x\circ u=y\)が成り立つ。\(\clubsuit\)の式と比較すると、\(y\)に対する\(u\)の唯一性から\(h_1\)も\(h_2\)も実は\(u\)、従って\(h_1=h_2=u\)が成り立つ。

 

引き戻し(pullback)

引き戻しと押し出し(pushout)は引き戻しが重要。

定義:3つの対象と2つの射\(\bullet \rightarrow \bullet \leftarrow \bullet\)をインデックスとする極限を引き戻し、このインデックスの双対の余極限を押し出しという。

$$\xymatrix{
X \ar@{.>}[dr]_u \ar[ddr]_x \ar[drr]^y & & \\
   & A\times_C B \ar[d]^{p_1} \ar[r]_{p_2} & B \ar[d]^g \\
  & A \ar[r]_f         & C
}$$

引き戻しは上記の図として描かれるが、\(A\rightarrow C \leftarrow B\)を底とする\(X\)を頂点とするコーンと\(A\times_C B\)を頂点とするコーンで、\(A\times_C B\)が終対象になっているので極限である。

この構造は\(A\times_C B\)が\(A,\,B\)の積に条件をつけたものであり、その条件とは\(A\times_C B\)から\(C\)への2本の射\(f\circ p_1,\, g\circ p_2\)による可換図式による等式となる。

\(\mathcal{Sets}\)で考えれば、\(A\times_C B=\{(a,b) | a \in A, b \in B, f(a)=g(b)\}\)となる。

引き戻しで特性関数を表現できるが、それは省略。

 

引き戻し=積とイコライザ

引き戻しの可換図式を見ると、直積の構造に平行射の等式で条件をつけている。つまり引き戻しは直積とイコライザを組み合わせで作れる。定理として述べて証明する。

 

定理:任意の2つの対象に直積があり、任意の平行射に対してイコライザがある圏において、\(A \times B\)から\(A, B\)への射影を\(\pi_1, \pi_2\)とすると、

$$ A\times_C B \cong eq(f\circ \pi_1,\, g\circ \pi_2)$$

が成り立つ。\(A\times_C B\)から\(A, B\)への射影を\(p_1, p_2\)は、

$$ p_1=\pi_1\circ e,\, p_2=\pi_2\circ e $$

で与えられる。

$$\xymatrix{ eq(f\circ \pi_1,\, g\circ \pi_2) \ar[r]^-e & A\times B \ar@<0.2em>[r]^{f\circ \pi_1} \ar@<-0.2em>[r]_{g\circ \pi_2} & C }$$

 

証明:

\(X\)を任意の対象とし、\(x:X\rightarrow A,\, y:X\rightarrow B\)を\(f\circ x=g\circ y\)を満たす任意の射とする。

$$\xymatrix{
X \ar[rrd]^y \ar[ddr]_x & & \\
& & B \ar[d]^g \\
& A \ar[r]_f & C }$$

\(A,B\)には必ず直積があるので、以下の図式と同値である。
$$\xymatrix{
X \ar[rd]^{<x,y>} & & \\
& A\times B \ar[r]^{\pi_2} \ar[d]_{\pi_1} & B \ar[d]^g \\
& A \ar[r]_f & C }
$$

\(f\circ \pi_1,\, g\circ\pi_2\)を平行射として、\(A,B\)を略して描くと、

$$\xymatrix{
X \ar[rd]^{<x,y>} & & \\
& A\times B \ar@<0.2em>[r]^{f\circ \pi_1} \ar@<-0.2em>[r]_{g\circ \pi_2} & C \\
}$$

平行射には必ずイコライザがあるので、

$$\xymatrix{
X \ar@{.>}[d]_u \ar[rd]^{<x,y>} & & \\
E=eq(f\circ \pi_1,g\circ \pi_2) \ar[r]_-e & A\times B \ar@<0.2em>[r]^{f\circ \pi_1} \ar@<-0.2em>[r]_{g\circ \pi_2} & C \\
}$$

で、eは\(f\circ \pi_1 \circ e = g\circ \pi_2 \circ e\)を満たす。任意の\(X\)に対して\(u\)は\(<x,y>=e\circ u\)を満たし、唯一存在する。

三角形XEAxBにおいて、<x,y>は直積の普遍性から唯一存在すること、\(u\)も唯一存在すること、\(<x,y>=e\circ u\)を満たすことから、以下の可換図式が成り立つ。

$$\xymatrix{
X \ar@{.>}[dr]^u \ar[dddrr]_x \ar[rrrdd]^y & & & \\
& E \ar[dr]^e & & \\
& & A\times B \ar[d]^{\pi_1} \ar[r]^{\pi_2} & B \ar[d]^g \\
& & A \ar[r]_f & C
}$$

\(p_1:E \rightarrow A = \pi_1 \circ e,\,  p_2:E \rightarrow B = \pi_2\circ e\)とおいて、\(A\times B\)を省略して描くと、

$$\xymatrix{
X \ar@{.>}[dr]^u \ar[ddr]_x \ar[rrd]^y & & & \\
& E \ar[d]^{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar[d]^g \\
& A \ar[r]_f & C
}$$

この\(E\)は引き戻しの可換図の終対象になっている。終対象は同型を除いて一意である。\(f\circ p_1=f\circ \pi_1 \circ e,\, g\circ p_2=g\circ \pi_2 \circ e\)に注意すると、

$$A\times_C B \cong E=eq(f\circ \pi_1, g\circ \pi_2)$$

が成り立つことが示された。

 

このビデオ講座で圏論の考え方にはかなり慣れてきた気がします。 一方、この先の講座ではプログラム理論への応用の話が増えます。

興味があるのは、指数対象、自然性、随伴。機会を見つけて勉強を続けることにします。