Maxima で綴る数学の旅

紙と鉛筆の代わりに、数式処理システムMaxima / Macsyma を使って、数学を楽しみましょう

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(1)

 

小島寛之先生のブログ記事

山本芳彦先生の著書「数論入門」

が絶賛されていました。その中で印象に残ったのが、有限体を使った平方剰余の相互法則の証明が秀逸、という点でした。

山本先生のこの本にはこのブログの以前の記事でも色々とお世話になっていますが、平方剰余は個人的に苦手意識もありちゃんと読んでいませんでした。改めて第3章剰余環から読んでみました。1週間くらいかけて有限体の復習、平方剰余と\(F_p\)とフロべニウス写像\(x^p\)、有限体のガウス和、そして平方剰余の相互法則の証明を理解することができました。

その過程でMaximaガロア体パッケージGFを使って証明で登場する有限体\(F_{p^f}\)の式を試すこともできました。

 

この本では標数\(p\)の有限体\(F_{p^f}\)で成り立つ2つの公式をフル活用して議論が進んでいきます。

任意の\(a,b \in F_{p^f}\)について\((a+b)^p=a^p+b^p\)。

任意の\(x  \in F_{p^f}\)について \(x \in F_p \iff x^p=x\)。

本書で個人的に面白いなと思ったことは、ガウス和を考える際に\(1\)の\(n\)乗根が必要になりますが、複素数ではなく有限体で考えていることです。これによって複雑な議論がかなり簡素化されているように感じました。例えば相互法則の証明の最後にガウス和の\(p\)乗の計算が登場するのですが、上記の上の式を使うことで非常に簡単に計算が進められていました。

もう1つこれは面白いと思ったのは、上記の下の式が、ある元が\(F_p\)に入るかどうかのフィルタ(選別機)として働いていることでした。平方剰余はまさに平方根が\(F_p\)に入るかどうかということですから\(x^p=x\)となるかどうかで表現できます。もう少し書くと\(\sqrt{a}^p=\sqrt{a}\)ならば\(a\)は平方剰余だということです。

 

今の計画では以下のようなシリーズで記事を書いていき、上記の面白さを具体的に紹介したいと考えています。

第1回 動機 ← この記事はここ。

第2回 有限体 フロべニウス

第3回 有限体とGFパッケージ

第4回 ガウス和と第2補充則の証明

第5回 相互法則の証明

最後まで辿り着けるでしょうか、、、。

 

なおシリーズの記事の中で紹介する命題には命題番号がついていますが、これは山本先生の「数論入門」に合わせてあります。