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数論を勉強していると、楕円曲線はよく登場します。例えば有名なフェルマーの最終定理は、フライにより楕円曲線と保型形式の対応に帰着され、ワイルズによって証明されました。楕円曲線はy^2=xの3次式として定義されたり、トーラス上の楕円関数の対応物として定義されたりします(後者からその名前がつけられました)。で、今度は楕円関数の定義を見てみると、歴史的には楕円の周長に関する楕円積分が考えられ、楕円関数はその逆関数として定義されました。また楕円関数にはヤコビの楕円関数やワイエルシュトラスの楕円関数(ぺー関数)のような人の名前がついているものがあります。一方、楕円関数は単に「複素平面上の有理型2重周期関数」と定義されていたりする場合もあります。何が一般論で何が例なのか、歴史的な経緯もあるためか、なかなかわかり難いものです。
この状況をとりあえず手っ取り早く知り、「数論の勉強に少しは関係しそうな範囲で」理解したく、色々な本を読んで見ました。
ヤコビの楕円関数sn(), cn()など、及びそれを導くための第1種楕円積分、第2種楕円積分などはあまり数論に関係しないので、とりあえず雰囲気だけの理解で良さそうに思っています。
楕円関数の定義としては、「複素平面上の有理型2重周期関数」という最も一般的な定義が結局は本質的なのでそうやって理解するのが良さそうです。
ワイエルシュトラスの楕円関数(ペー関数)は上記の定義による楕円関数の一例となっています。一方ペー関数とその微分は楕円関数を生成する関数として重要です。(つまり任意の楕円関数はペー関数とペー関数の微分の有理関数として作り出すことができるのです)。具体的な定義もあり理解もしやすいと思います。
ペー関数上の加法演算から楕円曲線上の幾何学的な加法演算が導かれます。そのためペー関数に関連して定義される各種の量は楕円曲線や関連した数論でもよくお目にかかるので、その意味でもペー関数は勉強しておくのが良いと思います。
実関数に\( \sin x , \cos x \)のような周期関数があるのと同様に、複素関数では2重周期関数を定義することができる。
\( z\in{C} \)として\( f\left(z\right) \)が2重周期関数であるとは、ある\( w_1 , w_2 \in C \)が存在して、\( w_1\,w_2 \neq 0 , w_1/w_2 \notin{R} \)の時、\( f\left(z\right) = f\left(z+n\,w_1+m\,w_2\right) , n , m \in Z\)を満たすことである。
R上の\( \sin x \)の値は、実際には\( 0 \leqq x < 2\,\pi \)上の\( \sin x \)の値で決まってしまう。(後はその繰り返し)。
同様に2重周期関数\(f\left(x\right) \)では、複素平面上の\( 0, w_1, w_2, w_1+w_2 \)の4点からなる平行四辺形の上での関数の値で、複素平面全体上のf(x)の値が決まる(平行四辺形上の値の繰り返し)。
このような2重周期関数で、有理型(正則関数の商として書けるもの)であるものを楕円関数と呼ぶ。