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-数学- 代数的数の全体は体を成す。代数的整数の全体は環を成す。

 

類体論へ至る道―初等数論からの代数入門

類体論へ至る道―初等数論からの代数入門

 

 

 この本の第7章は「代数体への入門」となっており、代数的数や代数的整数の導入編が展開されます。その基本となる定理が、

 

定理7.6 代数的数の全体 \( \bar{\Bbb Q} \) は体を成す。代数的整数の全体 \( {\Bbb O} \) は環を成す。

 

代数的数の方で説明します。有理数を係数とする1変数方程式f(x)=0の解となるような数のことを代数的数、というのでした。定理7.6から、有理係数の方程式f(x)=0, g(x)=0およびf(a)=0, g(b)=0となる複素数a,bについて、有理係数の方程式h1(x), h2(x), h3(x)でh1(a+b)=0, h2(ab)=0, h3(1/a)=0となるものがあることが分かります。つまり代数的数同士の和、積、及び代数的数の逆数はそれぞれ別の有理係数方程式の解となり、代数的数になる、というわけです。(代数的整数の場合も逆数は取れませんが和、積については同じです)。

 

そんなうまい具合に有理係数方程式が見つかるのでしょうか。

 

実は一番簡単なのが代数的数の積の逆数が満たす方程式を見つけることです。次の例題を見れば一目瞭然。

 

(%i1) P1:3*x^3+x^2-x+1=0;

$$ \tag{%o1} 3\,x^3+x^2-x+1=0 $$

(%i2) xx:solve(P1,x);

$$ \tag{%o2} \left[ x=-\frac{\sqrt{2}\,i-1}{3} , x=\frac{\sqrt{2}\,i+1}{3} , x=-1 \right]  $$

(%i3) subst(x=1/y,P1);

$$ \tag{%o3} -\frac{1}{y}+\frac{1}{y^2}+\frac{3}{y^3}+1=0 $$

(%i4) P2:%*y^3,expand;

$$ \tag{%o4} y^3-y^2+y+3=0 $$

(%i5) yy:solve(P2,y);

$$ \tag{%o5} \left[ y=1-\sqrt{2}\,i , y=\sqrt{2}\,i+1 , y=-1 \right]  $$

対応に気をつけながら、確認をしてみましょう。

(%i6) xx[1]*yy[2];

$$ \tag{%o6} x\,y=-\frac{\left(\sqrt{2}\,i-1\right)\,\left(\sqrt{2}\,i+1\right)}{3} $$

(%i7) %,ratsimp;

$$ \tag{%o7} x\,y=1 $$

 

では和の逆数( \( x \) に対して \( -x \) )の満たす有理係数方程式は見つけられますか?