Maxima で綴る数学の旅

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-数学- オイラー探検 第12峰 五角数定理(と約数和の漸化式)

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この本、Maximaで試しやすい話題が多く、とても気に入っています。

久しぶりに読み返してみて、オイラーの五角数定理の係数と約数和関数の間の一見不思議な関係について、改めてMaximaで検証してみました。

オイラーの五角数定理とは、

$$\notag \prod_{n=1}^{\infty }{\left(1-q^{n}\right)}=\sum_{n= -\infty }^{
\infty }{\left(-1\right)^{n}\,q^{\frac{n\,\left(-1+3\,n\right)}{2}
}}$$

というqに関する恒等式が成り立つ、というものです。右辺のqの指数に現れる\(\frac{n\,\left(-1+3\,n\right)}{2}\)が古来、五角数と呼ばれてきたのが定理の名前の由来のようです。

黒川先生の本をお持ちならp153から始まる節(第12峰 五角数定理)を参照してください。

 

(%i1) :lisp (progn (ql:quickload :drakma)(ql:quickload :maxima-asdf))
(%i1) install_github("YasuakiHonda","qsexpand","master")$
(%i2) asdf_load("qsexpand")$

上記3行は、githubに公開されているqsexpandというmaximaのプログラムを直接Maximaに読み込むためのおまじないです*1

まず、左辺の無限積をqpoly1として定義します。
(%i3) qpoly1:product((1-q^n),n,1,inf);
$$ \tag{%o3} \prod_{n=1}^{\infty }{\left(1-q^{n}\right)} $$

多項式の表示を無限和風に変更します。
(%i4) powerdisp:true;
$$ \tag{%o4} \mathbf{true} $$

無限積qpoly1を100次まで展開してみましょう。ここでgithubから読み込んだqsexpand()という関数を使います。
(%i5) qsexpand(qpoly1,100);
$$ \tag{%o5} 1-q-q^2+q^5+q^7-q^{12}-q^{15}+q^{22}+q^{26}-q^{35}-q^{40}+q^{51}+q^{57}-q^{70}-q^{77}+q^{92} $$

この多項式の次数と係数をじっとよくみて覚えてください。

 

さて、ここで本当に唐突に、一つの例として27の約数の総和を求めてみましょう。Maxima組み込みの約数和関数divsum()を使えば簡単です。
(%i6) divsum(27);
$$ \tag{%o6} 40 $$
27の約数の集合は\(\{1, 3, 9, 27\}\)なので\(1+3+9+27=40\)という訳です。

オイラーが発見した五角数定理と約数和関数の不思議な関係の一例は以下のような式です。
(%i7) divsum(27-1)+divsum(27-2)-divsum(27-5)-divsum(27-7)+divsum(27-12)+divsum(27-15)-divsum(27-22)-divsum(27-26);
$$ \tag{%o7} 40 $$

27から次数を引いた数の約数和を取り、係数をかけて引き合わせると、27の約数和になる、というのです。え?何?って思いますよね。

もう一つやってみます。今度は51を例に取りましょう。約数和は72になります。
(%i8) divsum(51);
$$ \tag{%o8} 72 $$

先ほどと同じように51から次数を引いて係数をかけて、、、
(%i9) divsum(51-1)+divsum(51-2)-divsum(51-5)-divsum(51-7)+divsum(51-12)+divsum(51-15)-divsum(51-22)-divsum(51-26) + divsum(51-35) + divsum(51-40) - 51;
$$ \tag{%o9} 72 $$

51から五角数定理の展開式の次数を引いた数の約数和を取り、その次数の係数をかけて引き合わせると(最後の項だけ扱いが異なりますが)51の約数和である72になります。

自然数Nの約数和divsum(N)とN未満の自然数N-kの約数和dvisum(N-k)の間に成り立つこの関係は、一体何なのでしょうか。一種の漸化式ではあるのですが、、、。27とか51など適当に選んだ数です。比較的小さい数10,11,12などで手を動かして、是非試してみてください。

 

黒川先生の本には証明への手引きが載っていました。次回は、Maximaの式変形機能を駆使して追ってみたいと思います。

*1:この辺のことは別途記事にする予定です。