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-数学- 現代的な原始元定理と単拡大の原始元の構成方法

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アクセス解析を見ていると、最近「ガロア理論 計算」みたいなキーワードで見にきてくださる方がいて、嬉しい限りです。

久しぶりにこの辺の記事を書いた時のことを思い出し、いくつかしっかりとは理解できていないことを思い出しました(色々理解できていないことはさておいて、、、です)。今回はその中から単拡大と原始元定理の話です。当時の記事でいえば、 

 

あたりです。

 

単拡大(あるいは単純拡大)とは体拡大\(E/K\)で、\(K\)に\(E\)の元をただ1つ付け加えて得られる拡大、と定義されます。付け加えた元を\(\alpha \in E\)とすれば\(E=K(\alpha)\)です。この\(\alpha\)を原始元と言います。

現代的なガロア理論の本(例えばアルティンの本とかロットマンの本とか)によると、原始元定理は次の形で述べられています。


定理:\(K\)の有限次拡大\(E/K\)が単拡大であるための必要十分条件は中間体が有限個しか存在しないことである。

 

あれ、原始元の構成方法とかどうなっているのだろう、ガロアの論文では解の線形結合を原始元として、これを解に持つ多項式を具体的に構成しました。その話と「中間体が有限個」が繋がらず、、、

 

その答えは原始元定理の証明の中にありました。

証明は、有限次拡大\(E/K\)において

「中間体が有限個」ならば「単拡大」

「単拡大」ならば「中間体は有限個」

の両方を示すことになります。原始元の構成方法は前者の証明で特に\(K\)が無限集合の場合に対応します。(\(K\)が有限の場合、\(E\)も有限となり、\(E\)の乗法が巡回群になるので、その生成元を1つとって原始元とすれば良い)。

有限次拡大\(E/K\)において「中間体が有限個」ならば「単拡大」の証明

 

\(K\)が無限集合の場合を考える。\(\alpha, \beta \in E\)について\(\gamma_c = \alpha+c\, \beta, c \in K\)を考え、単拡大\(K(\gamma_c)\)を考える。この拡大は\(E/K\)の中間体になる。

 

\(c\)の選び方は無限にあり対応した単拡大は全て中間体になるが、中間体は有限個しかない。このため異なる\(c, d\)に対して\(K(\gamma_c)=K(\gamma_d)\)となるように\(c, d \in K\)を選ぶことができる。その時、\(\gamma_d \in K(\gamma_c), \gamma_c - \gamma_d=(c-d)\,\beta\ \in K(\gamma_c)\)となり、結局\(\alpha, \beta \in K(\gamma_c)\)が分かる。故に\( K(\alpha, \beta) \subset K(\gamma_c)\)となる。

 

逆の包含関係は明らかなので、\( K(\alpha, \beta) = K(\gamma_c)\)である。つまり\(K\)に\(E\)の元を2つ付加して得られる拡大は単拡大であることが分かった。数学的帰納法により、\(K\)に\(E\)の元を有限個付加して得られる拡大は単拡大である。

 

有限次拡大\(E/K\)では、例えば基底は有限個であり、それらを\(K\)に付加すれば\(E\)が得られる。従って\(E/K\)は単拡大である。

 

この証明の中で有限個の異なる\(E\)の元の線形結合が原始元になることが示されています。この証明の中では基底の線形結合を原始元としていますが、基底の代わりに方程式の全ての解の線形結合でもこの拡大の原始元になり得ることは明らかです。

 

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