Maxima で綴る数学の旅

紙と鉛筆の代わりに、数式処理システムMaxima / Macsyma を使って、数学を楽しみましょう

-数学- ワイエルストラスのペー関数は2重周期関数

ペー関数の定義(%o1)をパッとみて、これをzの関数と見たとき、周期が\( w_1, w_2 \)の2重周期関数だと、簡単に見抜くことはできません。今回はこの2重周期性を証明して見ます。

以下のMaximaセッションではペー関数に関する(前回記事で紹介した)定義はすでに読み込み済みです。まずワイエルストラスのペー関数の定義をします。

(%i1) wp(z,w1,w2):=1/z^2+clatsumd(1/(z+m*w1+n*w2)^2-1/(m*w1+n*w2)^2,m,n);
$$ \tag{%o1} \wp\left(z , w_{1} , w_{2}\right):=\frac{1}{z^2}+\sum_{\left(m,n\right) \in Z^2-\left(0,0\right)}{\frac{1}{\left(z+n\,w_{2}+m\,w_{1}\right)^2}-\frac{1}{\left(n\,w_{2}+m\,w_{1}\right)^2}} $$

項別微分してみましょう。
(%i2) difftw(wp(z,w1,w2),z);
$$ \tag{%o2} \sum_{\left(m,n\right) \in Z^2-\left(0,0\right)}{-\frac{2}{\left(z+n\,w_{2}+m\,w_{1}\right)^3}}-\frac{2}{z^3} $$

和の中のm,nを0,0にするとちょうど\(-\frac{2}{z^3} \)ですからまとめることが出来ます。
(%i3) clatsum(part(%,1,1),m,n);
$$ \tag{%o3} \sum_{\left(m,n\right) \in Z^2}{-\frac{2}{\left(z+n\,w_{2}+m\,w_{1}\right)^3}} $$

このペー関数の微分は確かに\( w_1, w_2 \)を周期とする2重周期関数になっているのです。\( w_1 \)が周期になっていることは次のように示せます。まず実際に1周期分zを動かして見ます。
(%i4) subst_parallel([z=z+w1],%);
$$ \tag{%o4} \sum_{\left(m,n\right) \in Z^2}{-\frac{2}{\left(z+n\,w_{2}+m\,w_{1}+w_{1}\right)^3}} $$

分母をまとめてみると、
(%i5) modify_part(%,lambda([exp],ratsimp(exp,w1)),1,1,2,1);
$$ \tag{%o5} \sum_{\left(m,n\right) \in Z^2}{-\frac{2}{\left(z+n\,w_{2}+\left(m+1\right)\,w_{1}\right)^3}} $$

mが-∞から∞まで走ると、m+1も同じ範囲を走るので、この総和は(%o3)と一致します。つまり以下が成り立つ訳です。
(%i6) 'diff('wp(z+w1,w1,w2),z)-'diff('wp(z,w1,w2),z)=0;
$$ \tag{%o6} \frac{d}{d\,z}\,\wp\left(z+w_{1} , w_{1} , w_{2}\right)-\frac{d}{d\,z}\,\wp\left(z , w_{1} , w_{2}\right)=0 $$

両辺をzで積分して見ましょう。
(%i7) integrate(%,z);
$$ \tag{%o7} \wp\left(z+w_{1} , w_{1} , w_{2}\right)-\wp\left(z , w_{1} , w_{2}\right)=\mathrm{\%c5} $$

この積分定数c5が0であることが、\( z=-\frac{w_1}{2}\)を代入することで以下のようにして分かります。
(%i8) %,z:-w1/2;
$$ \tag{%o8} \wp\left(\frac{w_{1}}{2} , w_{1} , w_{2}\right)-\wp\left(-\frac{w_{1}}{2} , w_{1} , w_{2}\right)=\mathrm{\%c5} $$

ペー関数はzに関する偶関数だったことを思い出してください。それにより左辺の第1項と第2項は等しいので、
(%i9) rhs(%)=0;
$$ \tag{%o9} \mathrm{\%c5}=0 $$

が成り立つことが分かりました。

 

全く同様にして\(w_2\)が周期になっていることも示すことができます。

 

今回もコブリッツのこの本を参考にしました。

楕円曲線と保型形式

楕円曲線と保型形式