ガロア理論の周辺の問題として、「ガロアの逆問題」と呼ばれる問題があります。与えられた有限群をガロア群としてもつ多項式をあれば求めよ、というような問題です。もう少しきちんと書くと以下のようになります。
この問題に対して5次方程式のガロア群(対称群\(S_5\)の部分群)について"生成多項式"を具体的に与える論文[1]があります。位数10の2面体群、位数5の巡回群、位数20のフロベニウス群、5次の交代群、5次の対称群などは5次方程式のガロア群となるものです。それぞれの群について具体的な方程式を生成する方法が下記の論文には載っています。
橋本喜一朗、角皆 宏、5 次可移群に対する Q 上 2 助変数生成的多項式の構成、数理解析研究所講究録 1324 巻 2003 年 207-216
まずは位数10の2面体群です。下のD5polyはxの多項式でa,bという2つのパラメータがあります。このa,bに任意の整数を代入して得られるxの多項式のガロア群は(既約であれば)必ず位数10の2面体群になります。以下のSagemathのプログラムでは適当にa=1,b=2としています。
\( x^{5} - 2 x^{4} + 4 x^{3} - 5 x^{2} + 2 x + 1\)
PARI group [10, 1, 2, "D(5) = 5:2"] of degree 5
次は位数20のフロベニウス群です。下のF54polyの中のs,tに任意の整数(ここではs=4,t=-1)を代入すると位数20のフロベニウス群をガロア群とする5次多項式が得られます。
\( x^{5} + \frac{31}{4} x^{4} - 13 x^{3} + 6 x^{2} - 2 x + 1\)
PARI group [20, -1, 3, "F(5) = 5:4"] of degree 5
次は5次の交代群です。A5poly中のパラメータu,vに任意の整数(ここではu=2,v=1)を代入すると5次交代群をガロア群とする5次多項式が得られます。
\(x^{5} + 2 x^{4} - 22 x^{3} + x^{2} + 42 x + 143\)
PARI group [60, 1, 4, "A5"] of degree 5
最後に5次対称群です。下記のS5polyの中のパラメータu,vに任意の整数(ここではu=1,v=1)を代入して得られる多項式のガロア群は必ず5次対称群になります。
\(x^{5} - 7 x^{4} + 22 x^{3} - 50 x^{2} + 17 x + 1\)
PARI group [120, -1, 5, "S5"] of degree 5