Maxima で綴る数学の旅

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-数学- p進数入門 ヴィットの公式の証明(1) 補題とその証明

ヴィットの公式、折角なので証明したいと思います。

参照させて頂いている青木先生の著書

にも証明が載っているのですが、まだそちらはちゃんと理解できていません。その証明を読み始めて、別の簡単な証明を思いついたので、そちらを紹介します(間違っていたらすみません。指摘してください)。 なお今回はMaximaは式の表示に使っているだけで、その計算機能は使っていません。

%i1) load("padics")$
(%i2) texput(nounify(padic_norm),
lambda([arglist],block([f1,f2],[f1,f2]:args(arglist),
concat("\\left| ", tex1(f1), " \\right|_{",tex1(f2),"}"))))$

まず補題として、\(f\left(x\right)\)を\(Q\)係数の多項式として、極限をp進距離で考えると、
(%i3) 'limit(f(p^N),N,inf)=f(0);
$$ \tag{%o3} \lim_{N\rightarrow \infty }{f\left(p^{N}\right)}=f\left(0\right) $$

が成り立つことをこの記事では示します。要は、任意の多項式に\(p^N\)を入れて、\(N\rightarrow 0\)とすると、この多項式の値は\(f\left(0\right)\)にp進収束する、ということです。\(p^N\)は\(N \rightarrow \infty\)で0にp進収束しますから、\(f\left(p^N\right)\rightarrow f\left(0\right)\)は自然に思えます。次回の記事でこの式を使ってヴィットの公式を示すことにします。

この極限はp進絶対値を使うと、(%o4)のように書き直すことができます。
(%i4) limit('padic_norm(f(p^N)-f(0),p),N,inf)=0;
$$ \tag{%o4} \lim_{N\rightarrow \infty }{\left| f\left(p^{N}\right)-f\left(0\right) \right|_{p}}=0 $$

本当に成り立つのか、ちょっとだけ確認をしてみましょう。本当に適当に選んだ\(f\left(x\right)\)についてp=3として、N=1〜4について\(f\left(p^N\right)-f\left(0\right)\)のp進絶対値が0に近づくことを確認します。
(%i5) f(x):=3*x^2+6*x-5;
$$ \tag{%o5} f\left(x\right):=3\,x^2+6\,x-5 $$
(%i6) p:3;
$$ \tag{%o6} 3 $$
(%i7) for N:1 thru 4 do print(padic_norm(f(p^N)-f(0),p));
$$ \notag \frac{1}{9}\verb| | \\
  \frac{1}{27}\verb| | \\
 \frac{1}{81}\verb| | \\
 \frac{1}{243}\verb| | $$
$$ \tag{%o7} \mathbf{done} $$

試したNが少ないですが、0にp進収束しそうではあります。

では補題を証明します。一般的にも出来ますが、3次多項式で証明します。
(%i8) kill(p)$
(%i9) f(x):=a*x^3+b*x^2+c*x+d;
$$ \tag{%o9} f\left(x\right):=a\,x^3+b\,x^2+c\,x+d $$

f(x)-f(0)が0にp進収束することを示します。
(%i10) T:f(x)-f(0);
$$ \tag{%o10} a\,x^3+b\,x^2+c\,x $$

p進距離が非アルキメデス距離であることから、和のp進絶対値はp進絶対値の最大値で抑えられます。
(%i11) 'padic_norm(T,p)<= max('padic_norm(a*x^3,p),
'padic_norm(b*x^2,p),'padic_norm(c*x,p));
$$ \tag{%o11} \left| a\,x^3+b\,x^2+c\,x \right|_{p}\leq \mathrm{max}\left(\left| c\,x \right|_{p} , \left| b\,x^2 \right|_{p} , \left| a\,x^3 \right|_{p}\right) $$

積のp進絶対値はp進絶対値の積ですから、
(%i12) max('padic_norm(a*x^3,p),'padic_norm(b*x^2,p),'padic_norm(c*x,p)) = max('padic_norm(a,p)*'padic_norm(x^3,p),'padic_norm(b,p)*'padic_norm(x^2,p),
'padic_norm(c,p)*'padic_norm(x,p));
$$ \tag{%o12} \mathrm{max}\left(\left| c\,x \right|_{p} , \left| b\,x^2 \right|_{p} , \left| a\,x^3 \right|_{p}\right)=\mathrm{max}\left(\left| c \right|_{p}\,\left| x \right|_{p} , \left| b \right|_{p}\,\left| x^2 \right|_{p} , \left| a \right|_{p}\,\left| x^3 \right|_{p}\right) $$

ですね。ここでdを係数のp進絶対値の中の最大値とします。
(%i13) d=max('padic_norm(a,p),'padic_norm(b,p),'padic_norm(c,p));
$$ \tag{%o13} d=\mathrm{max}\left(\left| a \right|_{p} , \left| b \right|_{p} , \left| c \right|_{p}\right) $$

すると、%o12は、係数a, b, cのp進絶対値を全てdで置き換えて括り出したもので抑えることができます。
(%i14) max('padic_norm(a,p)*'padic_norm(x^3,p),'padic_norm(b,p)*'padic_norm(x^2,p),
'padic_norm(c,p)*'padic_norm(x,p)) <= 'd*max('padic_norm(x,p),'padic_norm(x^2,p),'padic_norm(x^3,p));
$$ \tag{%o14} \mathrm{max}\left(\left| c \right|_{p}\,\left| x \right|_{p} , \left| b \right|_{p}\,\left| x^2 \right|_{p} , \left| a \right|_{p}\,\left| x^3 \right|_{p}\right)\leq  d \,\mathrm{max}\left(\left| x \right|_{p} , \left| x^2 \right|_{p} , \left| x^3 \right|_{p}\right) $$

ここで\(x\)を整数に限ると、このmax()の値は実は最初の式であることがわかります。\(x\)がpでk回\(\left(k\geq 0\right)\)割り切れるとすると\(x^2\)は2k回、\(x^3\)は3k回、pで割り切れるからです。
(%i15) 'd*max('padic_norm(x,p),'padic_norm(x^2,p),'padic_norm(x^3,p)) = 'd*'padic_norm(x,p);
$$ \tag{%o15} d\,\mathrm{max}\left(\left| x \right|_{p} , \left| x^2 \right|_{p} , \left| x^3 \right|_{p}\right)=d\,\left| x \right|_{p} $$

このようにして%o16が成り立つことがわかりました。
(%i16) 'padic_norm(T,p)<=rhs(%);
$$ \tag{%o16} \left| a\,x^3+b\,x^2+c\,x \right|_{p}\leq d\,\left| x \right|_{p} $$

この不等式に\(x=p^N\)を代入すると、
(%i17) %,x:p^N;
$$ \tag{%o17} \left| a\,p^{3\,N}+b\,p^{2\,N}+c\,p^{N} \right|_{p}\leq d \,\left| p^{N} \right|_{p} $$

となります。この右辺のp進絶対値は、
(%i18) rhs(%)='d*1/p^N;
$$ \tag{%o18} d\,\left| p^{N} \right|_{p}=\frac{d}{p^{N}} $$

です。ここで\(N \rightarrow \infty\)とすると右辺が0に行きますから、これで補題の証明終了となります。

This is a test.
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