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-数学- 超幾何関数とテータ関数の恒等式のまとめ

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今回は一体「超幾何関数とテータ関数の恒等式」シリーズは何だったのかという説明です。昨年11月ごろに超幾何関数の勉強の記事を数本書いた後、楕円積分と超幾何関数の関係の記事を書きました。その後、流れでこのシリーズを始めました。本来動機や背景を最初に書いてから始めるべきだったのですが、最後の主定理の証明まで辿り着けるか自信がなく、、、分かるところを書き始めたのでした。

 

 

https://www.researchgate.net/publication/225178574_Eisenstein_series_and_Ramanujan-type_series_for_1p

この論文はラマヌジャンが見つけた17個の\(\frac{1}{\pi}\)に関する等式のうちの13個をラマヌジャンの元の着想に近い形で証明した論文です。著者はNayandeep Deka BaruahとBruce C. Berndtさんです。Berndtさんはここしばらくお世話になった以下の本の著者です。

元々数理科学2020年8月号「特集:ラマヌジャン」に掲載された平田典子さんの記事「ラマヌジャンと円周率近似公式」に触発されて、読みやすそうな証明が載っている論文を探していて見つけたのが上記論文"Eisenstein series and Ramanujan-type series for \(\frac{1}{\pi}\)"でした。

 

このNayandeepさんの論文、読んでみると眺めてみると超幾何関数、ラマヌジャンのテータ関数、アイゼンシュタイン級数のオンパレードです。先を読み進むためにはこの辺の基本的な結果や式変形に慣れる必要があります。

この論文の「2. 予備的な定義と結果」に、

$$\varphi(q)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}q^{n^2}$$

$$q=exp\left(-\pi\,\frac{{}_2 F_1\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2};1;1-x\right)}{{}_2 F_1\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2};1;x\right)}\right)$$

と定義すると、

$$\varphi\left(q\right)^2=_2 F_1\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2};1;x\right)$$

が成り立つ、とあります。これは楕円関数の理論における基礎的な結果なのだそうです。そこでまずこの式の証明を理解しようと考えました。もちろん自分ではその証明を見つけることは無理ですが、Berndtさんの本が手元にあり、よく見るとこの式がその第5章の主定理として証明を含めてバッチリ載っていました。そこでMaximaを援用しながらその証明を読んでみた、というのが「超幾何関数とテータ関数の恒等式」シリーズだったのでした。楕円積分から始めてなんだか不思議な式変形を繰り返していくうちに、主定理の式にたどり着きました。背景理論が分かっていないので\(x\)や\(q\)の関係の定義が謎なままですが、式として正しいことは確認できました。

 

このシリーズ、一旦ここまでとしますが、改めて平田典子さんの記事やNayandeepさんの論文を眺めてみると多分半分くらいは読めそうな感じです。ただその前に大きな壁があります。それは超幾何関数に関するクローゼンの定理です。

$${}_2F_1\left(\begin{array}{c}a,b\\a+b+\frac12\end{array};z\right)^2=
{}_3F_2\left(\begin{array}{c}2a,2b,a+b\\2a+2b,a+b+\frac12\end{array};z\right)$$

そしてその特別な場合として、

$${}_2F_1\left(\begin{array}{c}\frac12,\frac12\\1\end{array};z\right)^2=
{}_3F_2\left(\begin{array}{c}\frac12,\frac12,\frac12\\1,1\end{array};4\,z\,(1-z)\right)$$

この辺りの証明がわかったら、またこのシリーズの続きを書こうと思います。

 

 

平田典子さんの記事が載っている数理科学: