Maxima で綴る数学の旅

紙と鉛筆の代わりに、数式処理システムMaxima / Macsyma を使って、数学を楽しみましょう

-数学- 不思議な対称性 パラメータ表示から代数曲線を得る

 

という記事で、関数 \( f\left(t\right):=\exp \left(i\,t\right)-\frac{\exp \left(6\,i\,t\right)}{2}+\frac{i\,\exp \left(\left(-14\right)\,i\,t\right)}{3} \) とそのグラフ

f:id:jurupapa:20150621223347p:plain

を紹介したところ、通りすがりの方に、コメントで、「この曲線はx,yの28次多項式で表される代数曲線であるので、それを示せ」というお題をいただきました。

 

調べたところ、ノースカロライナ州立大学のHoon Hong教授とケプラー大学記号計算研究所のSchichoが1998年に発表した論文

Algorithms for Trigonometric Curves (Simplification, Implicitization, Parameterization)

でまさに取り扱われていることがわかりました。その論文でImplicitizationのアルゴリズムが提案されています。大雑把には以下の通りです。

  1. 入力は、(x,y)=( \( \sum_{k=1}^{m}{\left(b_{k}\,\sin \left(k\,t\right)+a_{k}\,\cos \left(k\,t\right)\right)} \), \( \sum_{k=1}^{n}{\left(d_{k}\,\sin \left(k\,t\right)+c_{k}\,\cos \left(k\,t\right)\right)} \) )という曲線。
  2. この式の中の \( \sin \left(k\,t\right) \) 及び\( \cos \left(k\,t\right) \) を全て、 \( \frac{z^{k}-z^ {- k }}{2\,i} \) 及び \( \frac{z^{k}+z^ {- k }}{2} \) に置き換える。
  3. 整理すると必ず次の形になる:(x,y) = \( \left( \frac{P\left(z\right)}{z^{m}} , \frac{Q\left(z\right)}{z^{n}} \right)  \)
  4. \( \mathrm{resultant}\left(P\left(z\right)-z^{m}\,x , Q\left(z\right)-z^{n}\,y , z\right) \) を計算する。resultant(f,g,v)は変数vの多項式f, gからvを消去して終結式を計算する関数。

前回の記事ではこのアルゴリズムをそのまま適用したのです。

 

 

 

ちなみにこの論文の筆頭著者であるHong教授はあの量限定子除去アルゴリズムCADをQepcadという形で実装した先生です。QepcadやそのMaximaへのインテグレーションについては

 

から始まる一連の記事を参考にしていただければと思います。