Maxima で綴る数学の旅

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-数学- 複素関数論(5) コーシーの積分表示(積分公式)

複素関数論の入り口で最も重要な定理と言われているコーシーの積分表示です。ある領域で正則な関数を積分を使って表示する方法を学びます。今回はその証明まで述べます。重要な応用は次回とします。 コーシーの積分表示(積分公式):単純閉曲線$C$の内部及…

-数学- 複素関数論(4) コーシーの積分定理

いよいよコーシーの積分定理について述べていきます。ここでは主に解析概論の57. コーシーの積分定理、に基づいて記載しています。 前回、原始関数を使った積分計算の定理を紹介しました。この定理から、ある関数の積分の計算は原始関数がある場合はそれを求…

-数学- 複素関数論(3) 複素積分

複素積分の定義をします。今回は特に、 2021年度現代数学基礎CIII 講義ノート 柳田 伸太郎氏 名古屋大学 を参考にしました。 複素積分の定義:$C$を滑らかな曲線として$C$上で定義された関数$f$ について、$f$の積分路$C$上での複素積分$\int_C f(x)dx$を次…

-数学- 複素関数論(2) 積分路のための複素平面上の曲線について

複素積分に必要な積分路をしっかりと定義するのはとても大変だということを知りました。 複素積分では積分路に沿って複素関数を積分します。この積分路は複素平面上の曲線であり、曲線をうまく定義できている必要があります。 このためにまずパラメータ付き…

-数学- 複素関数論(1) 正則関数と冪級数

まずはともあれ微分と正則関数です。 微分と正則の定義:複素数の集合を$\mathbb{C}$とする。$\mathbb{C}$の開部分集合$U$上の関数$f$が$U$の点$z$で微分可能である、とは極限 $$\lim_{h \to 0}\frac{f(z+h)-f(z)}{h}$$ が存在することを言う。この時 $$f'(z…

-数学- 複素関数論の勉強

この夏、毎日暑い日がつづています。そんな中、少し基本的な数学の勉強をしています。遠い昔、大学生の頃に多分一応勉強したと思うのですが、結構曖昧な部分も多いまま、なんとなく知っているふりをしてきた、複素関数のことです。 正則関数から初めて有理型…

-数学- 1つ問題を作ってみました。の解答編

問題 $p$を任意の奇素数とします。$p$が奇数なので$\sqrt{2}^{p-1}$は自然数になります。このとき$\sqrt{2}^{p-1}$を$p$で割るとその余りは$1$あるいは$p-1$になります。この事を証明してください。 例 $p=7$の時$\sqrt{2}^{7-1}=8$。$8$を$p=7$で割ると商は…

-数学- 1つ問題を作ってみました

今回の勉強をしていて、これはちょっと面白い問題が作れそうと思ったことがありました。それが以下の問題です。回答編は明日載せます。それまで考えてみてください! 問題 $p$を任意の奇素数とします。$p$が奇数なので$\sqrt{2}^{p-1}$は自然数になります。…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(10)命題4.19の証明

この記事では平方剰余の相互法則の証明に必要な補助定理である命題4.19を証明します。そためにまず命題4.18を補題として示します。 命題4.18$p,q$を相異なる奇素数、有限体$F_p$上で$1$の原始$q$乗根の1つを$\zeta$とします。法$q$に関する平方剰余記号の値…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(9)命題4.16の証明

この記事では補助定理の1つである命題4.16 $G_q^2=q^{\ast}$ を証明します。そのためにまず、補題4.17 を示します。 補題4.17$a$を整数、$\mu \neq 1$を$1$の$n$乗根とするとき、$$\sum_{k=1}^{n-1}{\mu^{a\,k}}= \begin{cases}n-1 & (a \equiv 0\,(mod\,n)…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(8)

いよいよ山本先生の本数論入門 (現代数学への入門)による相互法則の証明を見ていきます。有限体$F_p$におけるフロべニウス写像とガウス和を用いた証明です。今回はいくつかの補助定理を紹介し、それらを使った相互法則の証明を紹介します。それぞれの補助定…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(7) 第2補充則の証明

今回はいきなり第2補充則の証明から行きます。前回の記事 では第2補充則において$\sqrt{2}^p$の指数の$p$が変化するとそれに伴って平方剰余記号の値$\left(\frac{2}{p}\right)$が周期$8$で変化することを観察しました。 今回は山本先生の数論入門 (現代数…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (6) フロべニウス写像と2つの補充則

以下の式は$F_p$のフロべニウス写像によって$a$がいつ平方剰余になるのかを特徴づけているとも見えます。 $$\sqrt{a}^p=\left(\frac{a}{p}\right)\,\sqrt{a}\tag{A}$$ それが前回の記事の最後のステートメントでした。それらを再掲します。 「このことから第…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (5) フロべニウス写像と平方剰余

ちょっとだけおさらいから入りましょう。 $p$を素数、$F_p$を 位数$p$の有限体とします。$F_p$の$0$以外の元の集合$F_p^{\times}$は位数$p-1$の巡回群になります。そうするとフェルマーの定理から任意の$x\in F_p$について$x^{p-1}=1$が分かります。両辺に$x…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (4) 平方剰余の定義と相互法則

いよいよこのシリーズも核心に入っていきます。今回は平方剰余の定義を与え、平方剰余記号を定義します。また平方剰余の基本的な性質を示した後、平方剰余の相互法則と関連する補充則などを紹介し、簡単なものには証明をつけます。最後に平方剰余の相互法則…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明 (3) GFパッケージ

window.addEventListener('message', function(e) { var iframe = document.getElementById("tako"); var eventName = e.data[0]; var data = e.data[1]; switch(eventName) { case 'setHeight': console.log(data); iframe.style.height = data + "px"; bre…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(2) 有限体入門

駆け足で有限体を復習しましょう。 定義 有限体\(F_p\) 整数をある素数\(p\)で割った余りの集合\(\{0,1,\cdots,p-1\}\)には整数の加算や乗算の結果を\(p\)で割った余りとして自然に加算、乗算が定義でき、それらの単位元は\(0,1\)です。また全ての元に対して…

-数学- 有限体のガウス和による平方剰余の相互法則の証明(1)

小島寛之先生のブログ記事 で山本芳彦先生の著書「数論入門」 数論入門 (現代数学への入門) 作者:山本 芳彦 岩波書店 Amazon が絶賛されていました。その中で印象に残ったのが、有限体を使った平方剰余の相互法則の証明が秀逸、という点でした。 山本先生の…

-その他- M1 Mac上の新しい仮想環境 VMware Fusion Player 13(とKali Linux)

昨年の11月にVMwareからVMware Fusion Player 13がリリースされました。VMware Fusion PlayerはmacOS上で仮想マシンを実行できるソフトウェアで、UTMやVirtualboxなどと同様のカテゴリの製品です。 store-jp.vmware.com セキュリティ関係でKali Linuxを使い…

-その他- ラブソングの中の数学 Answers by Da-iCE

今年最後の記事は最近よく聴く楽曲の話です。 www.youtube.com Da-iCEのAnswersという楽曲です。最近お気に入りでよく聞いていたのですが、歌詞の中に「円周率」という言葉が聞こえることに気がつきました。おっ!と思って歌詞を調べてみると数学の用語が散…

-数学- ラマヌジャンのシンギュラーモジュリ

この記事では最も簡単なシンギュラーモジュリ\(x_2\)を求めてみます。この値は前回の記事で求めた式 $$\frac{2}{\pi}=\sum_{k=0}^{\infty}(-1)^k\,A_k\,(4\,k+1), ただしA_k=\frac{\left( \frac12\right)_k^3}{k!^3}$$ でも使いました。 シンギュラーモジュ…

-数学- 2次変換公式を取り替えて、さらに別のラマヌジャンの円周率公式を証明しよう(2)

P3C 今回は次の公式を証明します。 $$\frac{2}{\pi}=\sum_{k=0}^{\infty}(-1)^k\,A_k\,(4\,k+1), ただしA_k=\frac{\left( \frac12\right)_k^3}{k!^3}$$ Nayandeepさんの論文 "EISENSTEIN SERIES AND RAMANUJAN-TYPE SERIES FOR 1/π" では多くの円周率公式に…

-数学- 2次変換公式を取り替えて、さらに別のラマヌジャンの円周率公式を証明しよう(1)

以下の記事でNayandeepさんによるラマヌジャンの円周率公式の証明の構造を示し、フレームワークと呼んでみました。 maxima.hatenablog.jp このフレームワークの中でポイントとなる部分を変更すると異なる円周率公式を得ることができます。そのポイントの1つ…

-数学- Number Theory in the Spirit of Ramanujan, by Bruce C. Berndt

ラマヌジャン型の円周率公式の証明を理解する上で、\(q\)級数、超幾何関数、楕円積分、テータ関数、アイゼンシュタイン級数などをある程度理解しておくことが必要です。このためにとても役に立ったのが、このシリーズでも何度も紹介しているBerndtさんの次の…

-数学- 他の円周率公式も証明してみよう!

このシリーズでも折に触れて紹介してきたNayandeep BaruahさんとBerndtさんの論文 "EISENSTEIN SERIES AND RAMANUJAN-TYPE SERIES FOR 1/π" には多くの\(\frac{1}{\pi}\) 級数公式とその証明がフレームワークに基づいて示されています。今回はその中から次の…

-数学- ラマヌジャンの円周率公式証明の仕組みを調べる

ラマヌジャンの円周率公式のひとつである $$\frac{16}{\pi}=\sum_{k=0}^{\infty }{\frac{\left(42\,k+5\right)\,A_{k}}{2^{6\,k}}}\, ただし A_k=\frac{\left(\frac12\right)_k^3}{k!^3}$$ の証明を調べてMaximaで式変形を追いながら理解することができまし…

-数学- ラマヌジャンの円周率公式の証明(アイゼンシュタイン級数とその応用)

今回は今までに得られたアイゼンシュタイン級数の公式を元にして、ラマヌジャンの円周率公式のひとつを証明します。今回証明するのは次の式です。 $$\frac{16}{\pi}=5+ \frac{47}{64}\,\left(\frac12\right)^3 + \frac{89}{64^2}\,\left(\frac{1\cdot 3}{2\c…

-数学- アイゼンシュタイン級数とその応用

今回は今までに求めてきた2つの\(P(q)\)に関する数式を、\(n\)を適当な自然数として\(q=e^{-2\,\pi\,\sqrt{n}}\)の場合に特化した数式として計算してみます。とは言ってもおおむね代入して整理するだけです。 その系として次の式がほぼ自明に得られることも…

-数学- アイゼンシュタイン級数の変換公式(その6)

庭で見つけた足長蜂の巣。業者の方に退治してもらいました。 今回は次の公式を証明します。 \(P(q)=1-24\,\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n\,q^n}{1-q^n}, a\,b=\pi^2\)として、 $$ 6-a\,P\left(e^{-2\,a}\right)=b\,P\left(e^{-2\,b}\right)$$ 参考文献としては…

-数学- アイゼンシュタイン級数の変換公式(その5) 補足

ひとつ前の記事 maxima.hatenablog.jp を書き終えてからひとつ心に引っ掛かっていることがありました。普通は保型性を関数が\( z+1 \)や\(1/z\)で不変という形で表します。しかしラマヌジャンは\(a, b \gt 1, a\,b=\pi^2\)ならば\(h(a)=h(b)\)のような形で表…