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-数学- 指標の計算

この記事では有限体\(F_p\)の乗法群\(F_p^{\times}\) の指標\(\chi : F_p^{\times}\to C^{\times}\)を定義しました。
 

一般的には有限群の上で指標を定義できます。有限群\(G\)上の指標とは、準同型\(\chi:G\to C^{\times}\)、\(C^{\times}\)は0と異なる複素数の乗法に関する群のことです。

数論入門―ゼータ関数と2次体

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この定義も含めて、今回はこの本のp35-p36を参考にしています。

さて、与えられた群\(G\)の2つの指標\(\chi, \chi^{\prime}\) についてそれらの積\(\chi\,\chi^{\prime}\)および逆\(\chi^{-1}\)を、

\(\chi\,\chi^{\prime}\left(g\right)=\chi\left(g\right)\,\chi^{\prime}\left(g\right), \quad \chi^{-1}\left(g\right)=\chi\left(g\right)^{-1}\)

で定義することができます。よって\(G\)上の指標は群をなします。この群を\(\hat{G}\)で示し、指標群と呼びます。

いきなりよく分からないかもしれませんが、次が成り立ちます。

定理1  \(G\)を有限アーベル群とする。そのとき\(\hat{G}\)はGに同型である。特に\(\vert \hat{G} \vert=\vert G \vert\).

 なぜこの本からこの定理を引用しているかというと、(とりあえず指標群はどうでも良いのですが)この定理の証明の前半が、\(G\)が有限巡回群の場合と、その有限個の直和の場合(つまり一般の有限アーベル群の場合ですね)の指標の計算方法になっているのです。

 

まず\(G\)が単位元を\(e\)とする有限巡回群の場合、生成元\(g\)が存在するので、その位数を\(n\)とします。\(\chi\left(g\right)=\xi\)とすれば、

\(\xi^n=\chi\left(g\right)^n=\chi\left(g^n\right)=\chi\left(e\right)=1\)

つまり\(\xi\)は1の\(n\)乗根の1つであり、\(\chi\)は\(g\)の行き先\(\xi\)で決定してしまいます。

 

そして\(G\)が一般の有限アーベル群の場合には、生成元\(g_1,\cdots g_k\)があり、それらの位数を\(n_1,\cdots n_k\)とすると\(G\)の元\(g\)は、適当な整数\(r_1\cdots r_n\)を用いて、\(g=g_1^{r_1}\cdots g_n^{r_n}\)の形に書けます。\(g_i\)ごとに行き先を\(\xi_i\)と定めると、

\(\chi\left(g\right)=\chi\left(g_1^{r_1}\cdots g_n^{r_n}\right)=\chi\left(g_1\right)^{r_1}\cdots \chi\left(g_n\right)^{r_n}=\xi_1^{r_1}\cdots \xi_n^{r_n}\)

これにより、\(G\)の元\(g\)ごとに\(\chi\)による行き先が決まります。 

 

mod N(Nは自然数)のディリクレ指標はmod Nの既約剰余類群\(Z/NZ^{\times}\)(N未満でNと互いに素な自然数がmod Nの乗法でなす群)の指標のことです。特にNが素数pの場合、mod pの既約剰余類群は\(\{1,2,\cdots,p-1\}\)からなる位数\(p-1\)の巡回群となります。またこれは有限体\(F_p\)の乗法群\(F_p^{\times}\)とも一致します。

 

このmod pの既約剰余類群のディリクレ指標\(\chi\)を実際に求めてみます。有限巡回群の場合生成元を一つ求めて、その行き先として1のn乗根を一つ決めれば、\(\chi\)が決まってしまうのでした。具体的に、\(p=5\)とします。

 

(%i1) p:5;
$$ \tag{%o1} 5 $$

Maximaの組み込み関数zn_primroot(n)で(存在すれば)mod nの既約剰余類群の原始根(生成元)を求めます。
(%i2) pr:zn_primroot(p);
$$ \tag{%o2} 2 $$

確認のために2を生成元として2の冪乗\(2^k, k=1,2,3,4\)をmod 5で計算すると、全ての元が生成されることが分かります。
(%i3) makelist(mod(pr^k,p),k,p-1);
$$ \tag{%o3} \left[ 2 , 4 , 3 , 1 \right] $$

次に生成元の行き先について考えます。1の\(\left(p-1=\right)4\)乗根を全て求めます。
(%i4) XI:solve(xi^(p-1)-1);
$$ \tag{%o4} \left[ \xi=i , \xi=-1 , \xi=-i , \xi=1 \right] $$

それぞれを生成元2の行き先に出来るので4つの指標があることが分かります。それらを\(\chi_1, \chi_2, \chi_3, \chi_4\)としましょう。まず\(\chi_1\)として最初の\(\xi=i\)の場合を求めましょう。
(%i5) DEFCHI:chi_{1}(pr)=xi,XI[1];
$$ \tag{%o5} \chi_{1}\left(2\right)=i $$

\(\chi_{1}\)の引数として生成元の冪乗を取り、\(\chi_{1}\)の値としては\(\xi\)の値である\(i\)の冪乗になります。これを組みにしてリストにすれば指標が一つ求まります。

(%i6) char_table:sort(makelist([chi[1](mod(pr^k,p)),ev(chi[1](pr)^k,DEFCHI)],k,1,p-1));
$$ \tag{%o6} \left[ \left[ \chi_{1}(1) , 1 \right] , \left[ \chi_{1}(2) , i \right] , \left[ \chi_{1}(3) , -i \right] , \left[ \chi_{1}(4) , -1 \right] \right] $$

 

\(\chi_{2}\left(2\right)\)の行き先として(%o4)の2番目の解\(\left(\xi=-1\right)\)の場合の指標を求めます。
(%i7) DEFCHI:chi[2](pr)=xi,XI[2];
$$ \tag{%o7} \chi_{2}(2)=-1
$$(%i8) char_table:sort(makelist([chi[2](mod(pr^k,p)),ev(chi[2](pr)^k,DEFCHI)],k,1,p-1));
$$ \tag{%o8} \left[ \left[ \chi_{2}(1) , 1 \right] , \left[ \chi_{2}(2) , -1 \right] , \left[ \chi_{2}(3) , -1 \right] , \left[ \chi_{2}(4) , 1 \right] \right] $$

 

\(\chi_{3}\left(2\right)\)の行き先として(%o4)の3番目の解\(\left(\xi=-i\right)\)の場合の指標を求めます。
(%i9) DEFCHI:chi[3](pr)=xi,XI[3];
$$ \tag{%o9} \chi_{3}(2)=-i
$$(%i10) char_table:sort(makelist([chi[3](mod(pr^k,p)),ev(chi[3](pr)^k,DEFCHI)],k,1,p-1));
$$ \tag{%o10} \left[ \left[ \chi_{3}(1) , 1 \right] , \left[ \chi_{3}(2) , -i \right] , \left[ \chi_{3}(3) , i \right] , \left[ \chi_{3}(4) , -1 \right] \right] $$

 

最後に\(\chi_{4}\left(2\right)\)の行き先として(%o4)の4番目の解\(\left(\xi=1\right)\)の場合の指標を求めます。
(%i11) DEFCHI:chi[4](pr)=xi,XI[4];
$$ \tag{%o11} \chi_{4}(2)=1
$$(%i12) char_table:sort(makelist([chi[4](mod(pr^k,p)),ev(chi[4](pr)^k,DEFCHI)],k,1,p-1));
$$ \tag{%o12} \left[ \left[ \chi_{4}(1) , 1 \right] , \left[ \chi_{4}(2) , 1 \right] , \left[ \chi_{4}(3) , 1 \right] , \left[ \chi_{4}(4) , 1 \right] \right] $$

この最後の指標は\(\chi_{4}\)の値が全て1になっています。このような指標を単位指標と呼びます。冒頭で紹介した指標群の単位元になっています。

 

指標群の要素として上記で求めた指標を見るとき、各指標に群の要素としての位数nが定義できます。その指標をn乗して初めて単位指標になるようなnがその指標の位数です。最初に求めた指標\(\chi_{1}\left(1\right)=1,\chi_{1}\left(2\right)=i,\chi_{1}\left(3\right)=-i,\chi_{1}\left(4\right)=-1\)は4乗すると初めて単位指標になるので、位数は4です。

 

指標は平方剰余に関するルジャンドル記号と深い関係があります。気がつきましたでしょうか。\(\chi_{2}\)の指標の値とルジャンドル記号の値が一致しているのです。これはルジャンドル記号の値が1と-1になる場合の数が同数であることの証明の中で原始根の冪乗を使うのと全く同じ計算をしているので、分かってしまえば当たり前、となります。

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