Maxima で綴る数学の旅

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-数学- 「ガロア群計算の体論的な意味」への補足

雪のヘルシンキ空港

 

 

F(V)が因数分解できる場合にはV(元の方程式の根の一次結合)の根の置換で得られるV1, V2, V3,,,の全てがVの最小多項式の解になるわけではありません。 Vの最小多項式の根となるV', V''...V'''について、それらを得るための根の置換が Q ( V ) = Q ( α , β , γ ) Q(V)=Q(α,β,γ)で許される根の置換であることは自明でしょう。

-数学- ガロア群計算の体論的な意味 - Maxima で綴る数学の旅

と書きました。ガロア群計算についてはおしまいにしようと思っていたのですが、上記の部分、特に最後の「自明」に対応する体論の定理は何なのか、ここしばらく考えていました。 

 

上記の事柄を前提からおさらいすると、

  1. \(f\left(x\right)\)を\(Q\)上既約な\(n\)次多項式とし、その\(n\)個の解を\(\alpha_1,\alpha_2,,,\alpha_n\)とする。
  2. これらの\(n\)個の解を\(Q\)に一度に加えた拡大体\(Q\left(\alpha_1,\alpha_2,,,\alpha_n\right)\)を眺めていても何も分からない。
  3. そこで解の\(Q\)係数の一次結合\(V=a_1\,\alpha_1+a_2\,\alpha_2+ \cdots +a_n\,\alpha_n\)を作り、拡大体\(Q\left(V\right)\)という単拡大を考えると\(Q\left(V\right)=Q\left(\alpha_1,\alpha_2,,,\alpha_n\right)\)が成り立つ。
  4. \(V\)の式の\(\alpha_1,\alpha_2,,,\alpha_n\)の全ての置換を行った式を考えそれらを\(V_1\left(=V\right),V_2,,,V_{n!}\)とする。
  5. \(F\left(X\right)=\left(X-V_1\right)\,\left(X-V_2\right)\cdots\left(X-V_{n!}\right)\)を作り展開すると、\(n!\)次の\(Q\)係数の多項式になる。\(Q\)上で出来るだけ因数分解する。\(F\left(X\right)=P_1\left(X\right)\,P_2\left(X\right)\,\cdots P_k\left(X\right)\)。因数分解出来なければ\(F\left(X\right)=P_1\left(X\right)\)。
  6. \(F\left(V\right)=F\left(V_1\right)=0\)なので、右辺のどれかに\(V\)を代入すると0になる。それをここでは\(P_1\)とする。\(P_1\left(V\right)=0\)。4で定義した\(V_1, V_2,,,V_{n!}\)のうち、\(P_1\)に代入すると0になるものを\(V, V', V'',,,V'''\)とする。
  7. \(P_1\left(X\right)\)は\(Q\)上既約で\(P_1\left(V\right)=0\)なのでVの最小多項式となる。\(V,V',V'',,,V'''\)の最小多項式は共通で\(P_1\left(X\right)\)である。
  8. \(V,V',V'',,,V'''\)を得るための根の置換が\(f\left(x\right)\)のガロア群を構成する

この中の7.から8.を導く体論の定理は何か、というのが考えていたことです。

 

ほぼそのものズバリ、という定理が[改訂] ガロア理論入門ノートにありましたので、紹介します。

定義(共役) \(K\) を体,\(\alpha,\beta\) を \(K\) の代数的な元とする. \(Irr\left(\alpha, K) = Irr(\beta, K\right)\) で あるとき, \(\alpha, \beta\) は\( K\) 上共役である, または \(K\) 上の共役元である, という. また \(\beta\) は \(\alpha\) の \(K\) 上の共役元である, という.

(\(Irr\left(\alpha,K\right)\)は\(\alpha\)のモニックな最小多項式を表す)

 

定理 34 \(L\) は \(K\) の有限次ガロア拡大である ⇔ \(L\) はある \(f\left(X\right)(\in K\left[X\right])\) の \(K\) 上の最小分解体である.

 

命題 38 \(L\) を体 \(K\) のガロア拡大とし,\(\alpha, \beta \in L\) とする.このとき, \(\alpha, \beta\) が \(K\) 上共役である ⇔ \( \sigma \left(\alpha\right) = \beta\) となる \(L\) の \(K\) 自己同型写像 \( \sigma \) が存在する.

この命題38がそれです。

 

7.から\(V,V',V'',,,V'''\)は共通の最小多項式\(P_1\left(x\right)\)を持つこととなります。共役の定義より\(V\)と\(V',V'',,,V'''\)は\(Q\)上共役です。また\(P_1\left(X\right)\)の根はこれで全てですから\(V\)の共役元はこれで全てとなります。\(Q\)に\(V,V',V'',,,V'''\)を加えた拡大体\(Q\left(V,V',V'',,,V'''\right)\)は\(P_1\left(X\right)\)の最小分解体になりますから、定理34より\(Q\left(V,V',V'',,,V'''\right)\)は\(Q\)の有限次ガロア拡大になります。

 

そこで上記命題38より、例えば\(V\)と\(V'\)について、\(Q\)自己同型写像\(\sigma\)\(\sigma\left(V\right)=V'\)を満たすものが存在することとなります。

さらに、\(V_1=V, V_2,,,V_{n!}\)の中のある\(V_k\)が、\(V,V',V'',,,V'''\)に含まれない(\(V_k\)は\(V\)と共役ではない)とすると、\(\sigma\left(V\right)=V_k\)となる\(Q\)自己同型写像\(\sigma\)は\(Gal\left(Q(V)/Q\right)\)には存在しません。

 

では具体的に\(\sigma\left(V\right)=V'\)なる\(Q\)同型写像はどんな写像か、というとそれは\(V\)を\(V'\)にする解の置換そのもの、ということになるわけです。

 

「\(n\)次多項式\(f\left(x\right)\)のガロア群は\(n\)次対称群\(S_n\)の部分群になる」というステートメントはよく目にします。しかし、\(S_n\)のどんな部分群になるのか、すなわち\(S_n\)の要素でガロア群に含まれるものはどれで、含まれないものはどれか、が明示的に書いてあることは少ないか、初学者には読み取れないことが多いと感じます。上記の考察から「ガロア群による方程式の対称性」≒「共役」であろうと想像できるでしょう。

 

さらに調べ物を進めると、

ガロア群の要素と複素共役の類似性 – 五次元世界の冒険

にこの共役に関する様々な性質が記述されていることがわかりました。また「ガロア共役演算とは、このように「\(K\) にとって対等な数たち」=「\(K\)上共役な数たち」を互いに入れ替えるような操作であり、そういう点からも複素共役の拡張になっている、というわけだ。」という記述もありました。

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