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-数学- モジュラー形式とラマヌジャンの不思議な等式

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メディテレーニアンハーバー

 

アイゼンシュタイン級数の保型性を使うと、ラマヌジャンの不思議な等式(%o1)を示すことができます。

(%i1) sum(n^5/(exp(2*%pi*n)-1),n,1,inf)=1/504;

$$ \tag{%o1} \sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^5}{e^{2\,\pi\,n}-1}}=\frac{1}{504} $$

この式、どうやったら証明できるのか、本当に不思議ですよね。というかその前にこの式が成り立つと思えないと、始まりません。

とりあえず、左辺と右辺を数値計算してみます。まず左辺は、
(%i2) sum(n^5/(exp(2*%pi*n)-1),n,1,8),numer;
$$ \tag{%o2} 0.001984126984126984 $$

右辺は分数を小数に直すだけです。
(%i3) 1/504,numer;
$$ \tag{%o3} 0.001984126984126984 $$

左辺のたった8項を計算しただけで18桁も一致してしまいました。

左辺の形はランベルト級数に似ています。従ってアイゼンシュタイン級数とも関係するわけです。ではその様子を見てみます。

アイゼンシュタイン級数の定義は以下の通りでした。ここで総和は(m,n)=(0,0)にはなりません。
(%i4) Ez1:Ez[k](z)=lsum(1/(m*z+n)^k, mn,Z^2);
$$ \tag{%o4} \mathrm{Ez}_{k}(z)=\sum_{\mathrm{mn}\in{Z^2}}{\frac{1}{\left(m\,z+n\right)^{k}}} $$

ここで以下の条件を満たす整数a,b,c,dについて、
(%i5) modu:a*d-b*c=1;
$$ \tag{%o5} a\,d-b\,c=1 $$

以下の(%o6)が成り立つことからアイゼンシュタイン級数は重さkのモジュラー形式だったのでした。

(%i6) ev(lhs(Ez1),z:(a*z+b)/(c*z+d))=(c*z+d)^k*Ez[k](z);
$$ \tag{%o6} \mathrm{Ez}_{k}(\frac{a\,z+b}{c\,z+d})=\left(c\,z+d\right)^{k}\,\mathrm{Ez}_{k}(z) $$

ここでa=0,b=-1,c=1,d=0を代入すると、
(%i7) %,a:0,b:-1,c:1,d:0;
$$ \tag{%o7} \mathrm{Ez}_{k}(-\frac{1}{z})=z^{k}\,\mathrm{Ez}_{k}(z) $$

ここでzは任意の複素数を取り得るので、例えば虚数単位iを代入すると、
(%i8) %,z:%i;
$$ \tag{%o8} \mathrm{Ez}_{k}(i)=\mathrm{Ez}_{k}(i)\,\left(-1\right)^{\frac{k}{2}} $$

以下の計算では重さ6の場合を計算します。そこでk=6を代入してみます。
(%i9) %,k:6;
$$ \tag{%o9} \mathrm{Ez}_{6}(i)=-\mathrm{Ez}_{6}(i) $$

これを \( \mathrm{Ez}_{6}(i) \) について解きます。
(%i10) [E6]:solve(%,lhs(%));
$$ \tag{%o10} \left[ \mathrm{Ez}_{6}(i)=0 \right] $$

アイゼンシュタイン級数のフーリエ級数展開は%o11のqを使って、
(%i11) cond1:q=exp(2*%pi*%i*z);
$$ \tag{%o11} q=e^{2\,i\,\pi\,z} $$
(%i12) lsum(1/(m*z+n)^k, mn,Z^2)=2*zeta(k)+2*(2*%pi*%i)^k/(k-1)!*sum(divsum(n,k-1)*q^n,n,1,inf);
$$ \tag{%o12} \sum_{\mathrm{mn}\in{Z^2}}{\frac{1}{\left(m\,z+n\right)^{k}}}=\frac{\left(-1\right)^{\frac{k}{2}}\,\pi^{k}\,2^{k+1}\,\sum_{n=1}^{\infty }{\sigma_{k-1}(n)\,q^{n}}}{\left(k-1\right)!}+2\,\zeta\left(k\right) $$

とかけます。ランベルト級数の式変形を使えば、
(%i13) lsum(1/(m*z+n)^k, mn,Z^2)=2*zeta(k)+2*(2*%pi*%i)^k/(k-1)!*sum(n^(k-1)*q^n/(1-q^n),n,1,inf);
$$ \tag{%o13} \sum_{\mathrm{mn}\in{Z^2}}{\frac{1}{\left(m\,z+n\right)^{k}}}=\frac{\left(-1\right)^{\frac{k}{2}}\,\pi^{k}\,2^{k+1}\,\sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^{k-1}\,q^{n}}{1-q^{n}}}}{\left(k-1\right)!}+2\,\zeta\left(k\right) $$

となります。ここにqの定義を代入します。
(%i14) %,cond1;
$$ \tag{%o14} \sum_{\mathrm{mn}\in{Z^2}}{\frac{1}{\left(m\,z+n\right)^{k}}}=\frac{\left(-1\right)^{\frac{k}{2}}\,\pi^{k}\,2^{k+1}\,\sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^{k-1}\,e^{2\,i\,\pi\,n\,z}}{1-e^{2\,i\,\pi\,n\,z}}}}{\left(k-1\right)!}+2\,\zeta\left(k\right) $$

つまり次の式(%o15)が成り立つわけです。
(%i15) Ez[k](z)=rhs(%);
$$ \tag{%o15} \mathrm{Ez}_{k}(z)=\frac{\left(-1\right)^{\frac{k}{2}}\,\pi^{k}\,2^{k+1}\,\sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^{k-1}\,e^{2\,i\,\pi\,n\,z}}{1-e^{2\,i\,\pi\,n\,z}}}}{\left(k-1\right)!}+2\,\zeta\left(k\right) $$

ここにk=6, z=i (虚数単位)を代入してみましょう。
(%i16) %,z:%i,k:6;
$$ \tag{%o16} \mathrm{Ez}_{6}(i)=\frac{2\,\pi^6}{945}-\frac{16\,\pi^6\,\sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^5\,e^ {- 2\,\pi\,n }}{1-e^ {- 2\,\pi\,n }}}}{15} $$

この左辺の値は先ほど求めたのでした。それを代入します。
(%i17) %,E6;
$$ \tag{%o17} 0=\frac{2\,\pi^6}{945}-\frac{16\,\pi^6\,\sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^5\,e^ {- 2\,\pi\,n }}{1-e^ {- 2\,\pi\,n }}}}{15} $$

この総和について解いてみましょう。
(%i18) solve(%,part(%,2,2,1,1,3));
$$ \tag{%o18} \left[ \sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^5\,e^ {- 2\,\pi\,n }}{1-e^ {- 2\,\pi\,n }}}=\frac{1}{504} \right] $$

最後に塩を一振り!
(%i19) radcan(%);
$$ \tag{%o19} \left[ \sum_{n=1}^{\infty }{\frac{n^5}{e^{2\,\pi\,n}-1}}=\frac{1}{504} \right] $$

 

出来上がりです。